ジャガイモの方言量は実に多く、数百種を数えます(小学館方言辞典)。馬鈴薯、という言葉が最も馴染み深い言葉でしょう。飛騨方言では、せんだいも、という言葉で親しまれています。つまりはこの事だけで本一冊が書けますが、既にどなたかが書いていらっしゃるかも。
さて、せんだいも、の語源は江戸時代の飛州郡代・お代官様、幸田善太夫、がひろめた事によります。詳しくは高山市ホームページなどをどうぞ。つまりは、ぜんだゆういも、が訛って、せんだいも、になったという訳です。
民間語源として圧倒的なのが、仙台の芋、つまりは宮城県産の芋であろうか、という説ですね。さつまいも、は鹿児島県の特産である事からの安易な推量ですが、明らかな間違いです。
実は、幸田善太夫は当時、信州で栽培が始まっていたこの芋は同じく寒冷地・高地である飛騨でも栽培が可能であろうと着目し、信州から取り寄せたのでした。従って、せんだいも、には飛騨方言の別名があり、しんしゅういも、です。これが更に訛って、しんしも、とも言うそうですが(土田吉左衛門・飛騨のことば)、既に死語でしょう。つまりは、ぜんだゆういもは数世紀を経てセンダイモに訛ったのですが、同じ時代の言葉、しんしゅういもは訛らなかった、という訳です。
全国におよそ数百のジャガイモの方言量の幾つかは飛騨方言との共通語彙です。飛騨でも、馬鈴薯、と言う事はあるでしょうね。マスコミ、国語教育等の影響によるものと考えます。
小学館方言辞典から飛騨でもかつて話されていた言葉を抜書きして佐七なりに考えた語源を付記します。
こうぼういも 弘法大師信仰からの言葉か
しろいも 中身がしろいところから
しんしも しんしゅういも・信州いも、の訛りであろう
なついも 夏に栽培する事から
にどいも 二期作が可能、一年に二度採れるから
おたすけいも 飢饉に強く、人の命を助ける芋
以上ですが、ジャガイモを山梨県では、せいだいも、と言い実は、甲州代官・中井清太夫、が語源です。また全国の方言では、こうしゅういも、と呼ぶ地域が多く実は信州もそのひとつ、せんたいもは、つまりは甲州の清太夫から飛騨の善太夫に継がれた芋だったのです。