大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

とおし

戻る

古語動詞・とほす・通す、の連用形である事は書かずもがな、従って、とおし、とは通す事、という意味になりますが、飛騨方言では共通語とは明らかに異なる用法になります。このサ行四段動詞連用形は体言としてではなく、専ら副詞句的に用いられます。ただしアクセントはサ行四段動詞連用形に同じで平板です。続く助動詞の活用例としては、とおしに○●●●(=しょっちゅう)、などがあります。

意味は、平素から・常に・年がら年中・くせとして・絶やす事なく・いつなんどきでも、というような意味であり、共通語のそもそもの意味、つまりは、最初から最後まで連続的に、という意味はありません。

共通語では、語気を強めて、ぶっとおし、などという用法がありましょう。スタートから終わりまで絶えることなく・間断なく、という意味ですね。飛騨方言・とおし、とはそのような、つまり、ぶっとおし、という意味ではなく、時々は中断する事があるにせよ頻繁に、という意味なのです。

例文ですが
佐七ゃあ、とおし、オートバイのブログをかいどる。
意味は、佐七はしょっちゅうバイクのブログを書いている、という意味であり、明示されていないにせよある時刻からある時刻まで休む事なく、という意味はありません。つまりは、夜通し書いている、ぶっ通しで書いている、という意味ではありません。

手元の旺文社古語辞典をみますと、とほす、について八つの意味がありました。飛騨方言・とおし、は。それらのうち、ある一定期間継続させる、という意味に相当しましょうか。うーむ、それでもすっきりしませんね。

飛騨方言・とおし、は、しきりに、というような意味ですから、古語の同じ意味の言い回しとしては、
しくしく・しげし・しげけし・せちに・たびまねし・てしげし・しきって・しのに・しば・しばしば・ちへしくしくに・ちへなみしきに・ひらに・あまたかへり・あまたたび・いくそたび・しじに、しみみ・しみら・すたび・せつせつ・どど・まねし・よく
などに相当しますが、残念ながら語源候補はありませんね。常識でいきましょう、やはり飛騨方言・とおし、の語源は、四段動詞・とほす、の連用形です。ただし副詞句になっており、意味も明らかに共通語・通す、とは意味が異なる実に愛嬌のある言葉という事を一時間ほどぶっ通しで考えた私。

ページ先頭に戻る