大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

アズキナシの飛騨方言

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私:アズキナシはバラ科の落葉高木。別名がカタスギ、ハカリノメ。飛騨方言では、カマツカ、ないし、ムシカク。アズキナシの方言量はざっと百くらいかな。まずは、カマツカ、これについて語ろう。これは実は富山と飛騨の共通方言だ。つまり、地域限定。例によって、どうでもいいと言えばどうでもいい話だけどね。
君:ほほほ、それに、あまり聞いた事はないわね。つまりは死語。
私:まあそうおっしゃらずに。ひとつ大切な点、富山と飛騨の共通方言といえば、富山から飛騨へ伝わった言葉だと思えばいい。逆はあり得ない。
君:つまりは言葉は文明の高いところから低いところへ伝わる、という意味ね。
私:うん。海岸から山に伝わるとか、言葉は川をさかのぼるとか言う言い方もある。
君:なるほど。では、カマツカの語源は?
私:これは簡単。実はバラ科にカマツカというのが実はある。アズキナシをこれと勘違いして呼び始めたから、というのが答えだな。
君:それじゃあ、共通語のアズキナシとカマツカ、この二種類を区別せずに両方とも、カマツカ、というのが富山と飛騨という意味ね。
私:うーん、それはどうかな。手元に富山方言資料がない。今のところ不明という事にしてほしい。面白いのは、方言の、カマツカ、は全国共通方言で、しかも地域によって意味する樹木が異なる。カマツカは、秋田ではスイカズラ科のガマスミを示し、新潟ではバラ科のウワズミザクラを示し、青森・茨城・新潟・岐阜・三重ではバラ科のカマツカを示す、という調子で、早い話がもう、何が何だかわからないレベルのお話。
君:カマツカって古語にあるのかしら。
私:とてもいい質問だ。あるよ。清少納言の枕草子に出てくる。カマツカ雁来紅。文字通り、がんらいこう、と呼ぶこともある。はけいとう葉鶏頭、という。
君:やれやれ、今後も延々と古語の事を聞かされそうね。ところで、飛騨方言・ムシカクについてはどう?
私:飛騨の俚言だ。それ以上の事はわからない。ましてや、語源も。
君:あら、いい事ね。人生、何かもわかってしまっては、する事がなくて困るのよ。ほほほ

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