大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
オミナエシの飛騨方言 |
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私:オミナエシ女郎花の学名は、ちょいと牧野富太郎きどりで Patrinia scabiosifolia。先ほど調べた。飛騨方言では、あおばな。出典は土田吉左衛門・飛騨のことば。 君:あまり聞いた事はないわね。 私:正直言って、僕も。但し、無駄な話ではないと思う。ここは方言学・国語学のサイトなので、ことば、という事に的を絞ろう。学名はラテン語だが、意味はわかるかい。 君:そういう話ばかりしていると、人に嫌われるわよ。 私:だな。でも英語の勉強と思えばどうだい。 Patrinia ですぐ類推できるのは patriot パトリオット・愛国者。scabi と言えば scabies 疥癬という病名が思い浮かぶが、意味が通らないね。folia は葉っぱの事だ。ポートフォリオといえば書類入れ。二つ折りの葉っぱというわけだ。 君:なるほど。では、オミナエシ女郎花の語源は? 私:これは和語という事で決まり。つまりは上代(奈良時代)以前から日本にあった言葉。をみな女(=女性)から来ていることは書かずもがな。をみな・をとこ、は女・男。受験の古語単語でも最重要語。おみなえし、はシベリア原産の北方系の花で古代から日本全国に咲いていた。そして、おとこえし、という似た花が当然ある。八坂書房・日本方言植物集成によれば、吉城郡(現・飛騨市)では、おみなえし・おとこえし、共に、あおばな、という。 君:和語って方言量はすくないのじゃなかったかしら。 私:とてもいい質問だ。山・川、等、二音節が多いが、方言量は1。全国津々浦々で、やま・かは。地域は割愛させていただくが、おとこえし、は、しろばなという方言があるし、おみなえし、は、きいばな、という方言がある。花の色からの類推。蛇足ながら女郎花は秋の七草。万葉集に幾つか出てくる。山上憶良の歌が有名。 君:飛騨方言ではどうして、あおばな、というのかしら。青花という意味よね。 私:とてもいい質問だ。古代には、みどり、という言葉はなかった。青色も緑色も、あお、と言っていたんだ。青々とした山、などという表現に現代も生きている。 君:なるほどね。 私:それに僕なりの屁理屈としては、をみなえし、から、あおばな、へと気の遠くなるような音韻変化があったという事かもしれない。両語に共通するのは、お、の音韻。 君:ほほほ、いくらなんでも。 私:勝手な想像と言いたければ言え。つまりだな、をみなえし>をみな>をみ>あをみ>あお>あおばな。五段階での変化。数世紀あれば、この程度の言葉の変化はあって当然じゃないか。言語学の基本、シニフィアンの変化、ソシュール学説というんだよ。理論的にはこれで万全だ。イェーイ 君:またまた、訳の分からないことを。とてもじゃないが、ついていけないわ。ほほほ |
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