大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
タイサイの飛騨方言 |
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私:タイサイは漢字で書けば体菜。学名は、ちょいと牧野富太郎きどりで Brassica rapa subsp. chinensis。飛騨方言では、しゃくしな杓子菜。 君:タイナじゃないかしら。 私:タイサイが正式名で、タイナは誤用のようだね。ただし、タイナが広く使われるようになった現在、両語併記で、どちらも共通語、という事でいいと思う。ちょいと牧野に代わって、学名ってラテン語だよね。 君: chinensis はなんとなくわかるわ。チャイナ。つまり中国。 私:正解だ。体菜は中国原産の輸入食物。 Brassica だが、ラテン語でキャベツの事。だからタイサイはキャベツの一種。キャベツの事を何故、ブラシカ、というのか。これは古代ローマ人に聞いてみなければわからない。rapa はカブラ。しゃくしな杓子菜については書かずもがな、つまりは葉っぱが杓子状であるという形状からきた言葉。 君:つまりは、しゃくしな杓子菜は全国共通方言ね。 私:その通り、と言いたいところだが、実はこの言葉は全国広しと言えども飛騨だけ。つまりは俚言だ。イェーイ、俚言めえっけ。蛇足ながら三重(志摩)に、しゃくな、がある。全国的に多いのが、しゃもじな杓文字菜。 君:ほほほ、しゃもじな、は女房詞(にょうぼうことば)ね。 私:そう。元来は、しゃくし、の事を宮中女官が、しゃもじ、と言っていた。これを庶民がまねて、しゃもじ、というようになった。ただし飛騨にも女房詞がある。例えば、にたくもじ煮茎文字。つまり、く、は、くき茎、の隠語。 君:それでも、しゃもじ、という京都の雅な言葉が飛騨までは伝わらなかったのね。 私:いい質問だ。まさにその通り。タイサイの方言量はざっと百程度だが、紹介するには紙面が足りない。へらな箆菜、れんげな蓮華菜、めしじゃくしな飯杓子菜、などは形からの発想。 君:今朝は飛騨の俚言の発見とは。牧野富太郎が取り持つ方言の神様とのご対面ね。ほほほ |
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