大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

いきる(=熱く感ずる)

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私:「いきる(熱く感ずる)」は全国各地の方言になっているが、飛騨では尾高アクセントだから中高アクセントの「生きる」とは明瞭に区別できる。夏ともなれば飛騨では「あーれ・いきるなぁ(あーあ・とても暑いですね)」という季節の挨拶語だ。高山盆地も日中は暑い。京都と同じだ。
君:わざわざ動詞のコーナーに持ってきた意図は?
私:単刀直入だな。実は・・数日も書こうか書くまいか、悩み続けていたが、やはり限界。書きます。
君:どういう事?
私:2021年、地元紙・中日新聞に岐大の山田敏弘先生が「美濃ことば飛騨ことば」のコラムを連載しておられて、楽しんで拝読させていただいている。
君:それで?
私:「いきる」のコラムをお書きになったので読まれたかたも多いのではなかろうか。
君:それで?
私:内容はともかく、結びが「それにしても、いきますね(汗)。」意味は「それにしても暑いですね」。
君:それで?
私:「いきる熱」の丁寧表現という事だが、つまりは美濃飛騨方言の敬語表現(丁寧語)という事だが、「いきる熱」は自ラ四、語源は「息」+自ラ四「切る」あたりだろう。つまりは自ラ上一じゃない。自ラ上一「生きる」なら「生きます」だが、自ラ四「いきる熱」だから「いきります」だと思うんだけどね。文法的には。
君:「いきる(熱る)事ですねぇ」と、連体形にすれば問題無いわね。
私:自ラ四なので暑くない事は「いきらない」と言う。これは九州方言の上一の五段化のような語感なので、岐阜県人としては「いきらない」とは絶対に言わないと思う。また否定の「ない・ぬ」で飛騨方言は西側「ぬ」に属するから「いきらん」は文法的には正しいが、ますます九州方言の上一の五段化のような響きだから、これとて飛騨人はまずもって絶対に使わないだろうね。
君:言いたい事を簡単にひと言で書いたほうがいいわよ。
私:美濃ことばはいざ知らず、飛騨方言においては「いきる熱」は絶対と言っていいほど活用しない。否定形なら「いきる事が無い」というし、丁寧語なら「いきる事ですね」くらいかな。
君:美濃方言と飛騨方言の違いかもしれないわよ。
私:うん。その可能性がある。なにせ山田先生は専門家。数多く講演をこなしておられるようだ。聴衆のマナーとして大切な事がひとつ、「私はそんな言い方は聞いた事がありません」という直球を投げない事。読者の皆様におかれましてはくれぐれも誤解なさいませぬように、当記事は人をあげつらう意図で書いているのではありません。
君:そうよね。ただし「上一ではなく五段ではありませんか」の質問は有りね。
私:古語の話に戻ろう。「いきる熱」は自ラ下二の活用もある。この場合は「いきれる」、だから「いきれますね」は有りだと思うんだけどね。「いきますね」は「誤れる回帰」かも。全国の皆様は左七が何に悩んだかがお判りにならないのでは、と危惧している。
君:私には熱い思いが何となく伝わっているわよ。ほほほ

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