大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 方言学<

サ行イ音便・お年玉をおといで、なくいでまった藤木君

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サ行動詞のイ音便は方言学にしばしばテーマとして出てきます。出した、を、だいた、というのですが、岐阜・愛知・南信州・遠州などで用いられましょう。中部地方におけるサ行動詞連用形イ音便の分布などもご参考までに。

ただし、1977年刊の岩波日本語講座・方言学、東西方言対立の章、の馬瀬良雄先生の図では既にこれら中部地方の大半はサ行動詞連用形イ音便があるともないとも、つまりは両方が用いられる地方として示されています。

表題ですが、2008年の中日新聞の四こま漫画・ちびまるこちゃん、に藤木君、というキャラクターが連日のように登場し、お年玉を落として、無くしてしまった事が書かれているのですが、いささかサディスティックな内容です。現に本当に無くしてしまった子どももいるのかもしれない。漫画をみて泣き出すでしょう。

余談はさておき、明治生まれの飛騨人はバリバリにサ行動詞連用形イ音便を使っていらっしゃったのでしょうが、時代は流れ、急速に廃れつつある用法という事なのでしょう。上記の図と馬瀬良雄の図、二つを見て筆者が直感した事は、東西対立とでもいうべき話法であるが境界が西にずれた、という事です。

北陸・畿内ではサ行動詞連用形イ音便が守られつづけるのなら、この方言境界は白山・養老山脈の線に一致するようになり、やがて中部はサ行動詞連用形イ音便の無い地方になるのでしょうね。

藤木君はお年玉を落といで、無くいで、一生懸命さがいで、
それを皆に隠いで、が終に皆に話いで。
そうしたら、まる子が藤木君をあやいで、またそのニュースを回いで。
それを知ったまる子の母親がどやいだ。

このような飛騨方言はいずれ話されなくなるのでしょう。

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