大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言 You Tube Contents & grammar |
そもそも飛騨方言のサ行変格活用(サ変) |
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私:釈迦に説法のような話で申し訳なく思います。 君:えっ、どうして。突っ込みやれ、って事?いやだわ。いつものパターンで、あなたが突っ込みするのよ。 私:だね。口語が慣れた現代人だけど、古語のサ変のほうが口語のサ変より簡単だよね。 君:まずはおさらいして。 私:活用が簡単という事さ。文語では「せ/し/す/する/すれ/せよ」、口語では「し(せ・さ)/し/する/する/すれ/しよ(せよ)」。どうしてサ変は複雑化してしまったのだろう? 君:ひとつには文明の進化と共に動詞が増えた事があるでしょう。「パソコンする」とか。 私:「愛す」なんてのは「愛さない・愛し・愛す・愛せ・愛そう」等、もはや五段化している。かつてのサ変が四段化、五段化してしまった現象じゃないの?昔だって「田植えする・稲刈りする」、結構、人の動作は多かったと思うのだけど。 君:確かにね。でもね、江戸時代に上一段化した例もあるのよ。「感ず(じ/じ/じる/じる/じれ/じろ)」 私:そうだった。ザ変を忘れていたぜい。「感ずる・感ぜい」。時代劇でよくやってるよね。気分は戦国武士。 君:教科書や辞典には何もかもは記述できないのよ。 私:そろそろ飛騨方言の口語サ変の話にしよう。未然否定は「せん」で決まりだな。だから「しないで」というところは「せずに」で決まりだ。ところが「しずに」とお話しなさる例があってびっくりしてしまったよ。まずは動画をご覧いただこう。3:36 の部分での拡声器からの中年女性のお言葉だが「・・恥ずかしがらずに、遠慮しずに・・」とおっしゃってるでしょ。 君:確かに。サ変未然「し」+打消助動詞「ず」の接続だわ。でも、とても自然な飛騨方言の謂(いい)だわ。 私:そりゃそうさ。僕はこのお方の飛騨方言の接続は間違っているなんて言っているわけじゃない。ただし僕が飛騨方言丸出しでマイクに向かうなら、さしずめ「恥ずかしがらんで」「恥ずかしがらすと」「遠慮せんで」「遠慮せんすと」「遠慮のう」なんて言葉が自然に出るのだろうけど。 君:私は恥ずかしくて飛騨方言は話せないわ。 私:これって今の流行りの「新方言」の定義に当てはまらないかな。新方言:現代に生まれた方言。若い世代に多く、非標準語形、使用者自身が方言として認識、の三条件を満たすもの。若者が標準語にない語彙を方言から取り入れる現象。井上史雄の命名。例「違っていて」を「違くて」。つまりは「しない」と「せず」を足して「しず」。 君:ほほほ、致命的な間違いを犯してるわよ。高山市という片田舎の中年女性が新方言をお話しになるかも、という発想自体がアウトよね。 私:だからね、冒頭にも言ったでしょ、ちょっとボケてみたんだよ。そうしたら鋭い突っ込みで話を盛り上げてくれたというわけだ。ははは、まんまと引っかかったぞ。僕もね、このおかたが新方言を話したなんて露ほども思っていない。 君:根本的に接続が異なるのよ。「しないで」の「で」は先行の未然用言に接続する係助詞で「ずして」「ずて」の転、後代には「ずに」も出てくるわ。「しずに」の「に」は接続助詞でしょうけど、あるいは先行助動詞連用形「ず」に接続する並列助詞「に」かも、と言うところかしら。 私:だよね。「しないで」は未然、「しずに」は連用、混交など起こるべくもない。結論を急ごう、多分「しずに」は江戸時代にサ変が上一段化して直ちに天領・飛騨に直輸入されたのじゃないかい。上三之町界隈で、ちょいと洒落た江戸言葉という事で。 君:多分、そうよね。だから飛騨の言葉としてしっかりと染み込んでいるのよ。 私:ところでこの動画で・・べつぎ/あり。 君:いかで/古語にて/かたらひ/おはすとは。 私:いと/おもはゆく/はづかし。 君:ゆめゆめ/うちあけまほし。 私:あ/が/おと(弟)/なる/東小校長/わらは/ら/と/やんさ/おどりたり。┌(・。・)┘♪ 君:はたやはた/あきらけく/うつり/なむ。 私:いかにも/うつりたり。 君:やや。ほほ。しろたへ/の/きぬ/はおりて/ちゃうじ(ベージュ)/に/そめたる/はかま/にて/わがせ(貴方)の/おとひと/の/きみ/しかと/みゆ。 私:あがなせ/ほほ/と/わらふ/こと/え/たへたら/ず/も/ごしゃう/にて/な/しるべ(知人)/に/かたり/そ。 君:校長先生/きはめて/をかしく/かたき/こと/なれど/ひめごと(個人情報)/しかと。 |
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