後項動詞があれば前項動詞もあるくらいは
どなたも想像できましょう、なぐる+つける、で
殴りつけるという動詞になりますが、つけるが
後項動詞です。
ところで、なぐる・なぐりつける、の二つに
どれだけの意味の差があるのでしょう。
いきなり、思いっきり、強く、あるいは執拗になぐる場合にやはり、
なぐりつける、というのでしょうね。
この種の複合動詞は、
はりつける、やっつける、たたきつける、等々、
闘争的な動詞のオンパレードというところでしょうか。
尤も、身についている、という意味で後項動詞・つける、
が用いられる事も多く、飛騨方言・やりつける、は、やり慣れるという
意味です。他に、たべつける、かかりつけの医者、等の用法があります。
さて、本稿のテーマは後項動詞・つける、における前項動詞の語の脱落について。
以下、思いつくままの内省ですが、
共通語 脱落 飛騨方言
やっつける 有 やつける
(やりつける)
ほうりつける 有 ほかつける
(ほかりつける)
はりつける 有 はつける
叱りつける 有 しかつける
なぐりつける 無
たたきつける 無
塗りつける 無
結びつける 無
巻き付ける 無
据え付ける 無
取り付ける 無
売りつける 無
送りつける 無
貸し付ける 無
買い付ける 無
受け付ける 無
呼びつける 無
踏みつける 無
締め付ける 無
言いつける 無
にらみつける 無
どうですか。もはや規則は明らかですね。
飛騨方言に於いては前項動詞がラ行動詞でなければ
語の脱落は決して生じないのです。
逆は必ずしも真ならず。
すべての前項ラ行動詞で語の短縮があるわけではありません。
やる、ほうる、しかる、なぐる、等、つまりは素早く相手に
ダメージを与える意味の動詞においてはきびきびとした言い方が
好まれて、語の脱落が生ずるようですね。
そういえば、思いっきりぶんなぐる事を飛騨方言で
くらつける
というのですが、実は富山方言に同じです。くらふ+つける、が原義でしょう。
一発くらわせる、と共通語訳してもよいでしょう。
ラ行動詞ではないので、例外、という事なのですね。
なあんだ、例外があったのか。とほほ。世紀の発見ならず。
p.s. 2007/4/28 は郷里の村祭りでした。
夕方まで仕事があり終わるや否や、
後はほかつけて、
四十一号を走りました。なんとか夜の宴会に駆けつけた私。