大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
どうまる(=ちゃんちゃんこ) |
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私:さきほどは高校の友人から有用な情報をいただいた。ちゃんちゃんこの事を大西村では「どうまる・どうまり」というが、彼の家では「どまり」と言うとの事。彼のお母さまは国府町の出身。古川出身の別の友人からも「どまり」と言うとの情報をいただいた。 君:語源は胴丸ね。 私:そう合戦着のひとつ。平安中期までは一対一騎馬戦にて大鎧の時代、鎌倉以降は歩兵集団対決が勝敗を決するようになり、軽快で着脱容易な胴丸が生まれた。角川古語大辞典に詳しい。武具などの辞典にはもっと詳細に書かれているだろう。 ![]() 君:でも庶民が冬にまとう綿入りの羽織がちゃんちゃんこだわよ。 私:ちゃんちゃんこを胴丸というようになったのは近世だ。上方語辞典に記載がある。これが各地の方言になっている。方言量は多いね。飛騨全域で「どーまる・どーまり・でんちこ」、益田郡「ちゃんちゃん・でんち・どんまり・どんまる」、吉城「どまり・どまる」。 君:「ちゃんちゃんこ」の語源ってわからないかしら。 私:ははは、調べたぞ。大言海に記載がある。「ちゃんちゃんこ」は志那人の服装。ここから子供用で冬用の綿入り羽織をそう呼ぶようになった。つまりは「ちゃんちゃんこ」は近代語。 君:ほほほ、そして「どうまる(綿入り羽織)」は近世上方語。 私:その通り。そしてその語源は「どうまる胴丸」、鎌倉時代の甲冑着。全国の音韻変化、例えば飛騨地方でも旧吉城郡の「どまり」等、は全て近世・近代に、つまりは数世紀の短期に生じた可能性が高いね。 君:あなた、ご友人のかたにちゃんとお礼の返事をなさったのかしら。 私:気心知れた友人達だ。持つべきは友、大切な言葉だね。 君:ほほほ 私:ところで、南木曽ねこを知らないかい。「なぎそねこ」と呼ぶ。 君:あら木曽地方の「どうまる」じゃないの。 私:夫婦で昼神温泉に行ったら売っていた。迷わず、孫の数だけ、三着を買い求めた。 君:ほほほ、奥様とご自身の分は? 私:僕はカーディガン派。家内は既に立派な綿入り羽織を何着も持っている。ところで、関連語句としてはつづりさせ(コオロギの鳴き声)を知って欲しい。 君:簡単にひと言で説明お願いね。 私:うん。死語といってもいいが、全国広しと言えども飛騨方言のみに残る古語の雅語でコウロギの別名。意味は「綿入れ羽織の修繕をして冬支度をせよ」。 君:飛騨にのみ残った古語の雅語、飛騨も捨てたものじゃないわね。 私:どの地方の方言にも有るとは思うがね。方言とは無形文化財だね。 君:あなた、若しかして益田郡「でんち」の語源もお調べになったのね。 私:ははは、勿論。「殿中羽織(袖なし羽織)」これの音韻変化だ。この世の中に語源の不明な語彙など無い。どう? 君:おおっ、大きく出たわね。でも、一生懸命にお調べになって、一応は「まる」よ。ほほほ |
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