大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
きさくい(=きさくだ)-2 |
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私:昨晩は飛騨方言の形ク「きさくい」の語源は「気がさくい」であろうと論じた。古語の形ク「さくい」は、あっさりした様・気軽な気性。 君:それで十分じゃないの。狂言・末広がりが出典よね。 私:そう。でも、それじゃあ語源論にならないな。どうして「さくい」などと言う形容詞が室町時代に生まれたのか、それこそが語源論。思うに、これってオノマトペじゃないかね。 君:擬音語・擬態語がオノマトペだから擬態語だろうと思い込んだのね。 私:ふふふ、引っかかったぞ。 君:えっ、擬音語?そりゃあね、サクッとした食感とか、サクサクとした衣の中にジューシーなポークとか、小学生でも思いつく事だけど。 私:狂言だから、袴の衣擦れの音じゃないだろか。優柔不断で動かない気性ではなく、フットワークが軽い人の袴の衣擦れの音。 君:何の根拠もないんじゃないのかしら。第一に出典を示せないのでしょ。辞書にない事を考えても駄目よ。 私:でも副「さくさく(と)」は宇治拾遺に文例があるんだよ。ははは 君:へえ。 私:決定打の情報はあつまの花軸(娘評判記)。出版は明和年間。「さくさくとして男よりも物にすみやか也る気性也」。さくさく、は気さくである様。ははは、君の事か。 君:なるほど、決定的な証拠ね。オノマトペ「さくさく」は形動タリ「きさくだ」の語源であった事は間違いないわね。ほほほ 私:だろ。「さくさくたり」があって「さくい」が生まれた可能性がある。「さくさくたり」が形動タリ「きさくだ」に直接に変化したのでは、と考えるともっとわかり易いかな。 君:大判小判が「ざくざく」もあるわよ。 私:あるね。それにもうひとつ、日葡辞書に「さくりとした人 Sacurito xita fito (敏活で、てきぱきとした人)」の記述があるんだ。どんなもんだ。がはは 君:なるほどね。「さくさく・さくり」あたりから形ク「さくい」が生まれたのね。辞書から拾えたので合格よ、妄想左七君。但し、宇治拾遺・日葡・あつまの花軸、これらは全て擬音語じゃなくて擬態語よ。擬音語は間違いね。オノマトペとだけ言っておけば恥をかかずに済んだのに。ほほほ 私:なんだと。言ってくれたね。君が大嫌いになった。歯に衣着せぬ物言いは君こそ正に娘評判記だ。道楽山人さあん。 君:やれやれ、その言い方。どうにかならないかしら。つまりは私が「さくさく」で、あなたは「ねちねち」なのよ。ほほほ |
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