飛騨方言で、ごて、という言葉がありますが、
意味はご主人という事で、他所の家の家長に対する敬称です。
もともとが御亭、という古語に由来する言葉なので、他所の家の事であれ、自分の家であれ、
お父さんに対する敬称であってよさそうなものですが、
飛騨方言では専ら、そこのごて(=あなたの家の家長さん)、となりのごて(=お隣りの家長さん)、あすこのごて(=あそこの家の家長さん)、などの用法しかないようです。
ということで、飛騨方言では、自分の家の家長にはどのようなほめ言葉があるのでしょうか。
私のお袋は夫のことを、もっぱら、とうちゃん、と言っています。本人に対しても、これとうちゃん!、
もっとも既に高齢でもあり、じいちゃん、と言うようになってきています。
私のおばの一人が、とにかく外来語が好きで、マイダーリン、といっていますが、とても飛騨方言とはいえません。
あくまでも推察ですが、飛騨方言でご自身の夫に対して用いなさる敬称というのは、だんな、あるいは、だんなさま、
ごしゅじんさま、などでしょう。
飛騨方言の言い回しとして、私のごて、が不自然であるひとつの理由は、そもそも、ごて、が敬称である以上、
身内に対して敬称を用いるのは敬語の用法に反する意識があるからなのです。
飛騨方言の会話で、そこのごて、という敬語を用いてついでに自分の家を示す場合、
子供であれば、うちの親といい、妻であれば、つれ、といえば謙譲表現になります。
もうひとつの理由は、あるいは最も重要なことでしょうが、ごて、と言う言葉は尊敬語にもかかわらず、響きがよくないのです。
ごて、は後手という言葉を連想させ、後手に回る、といえば決していい意味とは言えません。
ごてごて、という言葉もありましょう。
以上、"私のごて"という方は飛騨には皆無でしょう。
飛騨方言では、父親・家長をに対するほめ言葉、は、とっつぁま、ないし、つぁま、が一般的ではないかと思います。
他所の家に対しても、また身内に対しても用いられます。
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