大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
格助詞とは |
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私:今夜は格助詞のお話を。先ほどはあちこちの学術書を読んで、ふーん、という感じになったので今日のテーマに選んだ。 君:ほほほ、取り留めのない話になりそうね。 私:そういう事。格助詞の定義だが、これはもう、「格」を助ける「詞」だな。「格」とはなにか、をまず知る必要がある。 君:方言学に結びつけなくちゃ駄目よ。 私:そういう話になるかもしれないしならないかもしれない。京へ筑紫に板東さなんてのは方言学では有名な格言だが。一応は親父ギャグのつもり。これって「方向格」とでも言えばいいのだろうか?違うよね。 君:勿論、違うわよ。与格だわよ。 私:目的格と言えば「〜を」だが、「京大へ進学する」は「京大をものにする」と同じ意味だね。Marry her! 彼女と結婚しなさい、と訳しがちだが、彼女をめとれ、の訳のほうが目的格っぽいね。実際、英文法では、この場合、 her の格(case) は目的格(objective)。国文法ではズバリ、「ヲ格」とか「ニ格」とか、格助詞の名前そのもので表現する事もある。これには唖然、自家撞着だな。「が」は必ず主格と言って欲しいな。他の格はファジーな概念だ。奪格、言いたい気持ちはわかるけど。「めとる」に係るのは目的格だろうが、「寝取る」にかかるのは略奪格だ。ぶっ 君:中学で習うわね SVOP。 私:subjective, verb, objective, predicative, つまりは主格+動詞+目的格+指示格。今回は国文法に限った話にしたいが、「格(case)」は英文法概念の輸入であり、一言で言えば「(代)名詞の存在形式」。そしてこれが肝、英語は格を語順で決定し、日本語は格助詞が(代)名詞に接続して決定する。決定した事による結果は、(代)名詞の存在形式・意義。平たく言えば主語とか、目的語とか。 君:要は、格助詞は体言に接続するのみ、という事ね。 私:中学生なら知っている事、ガ・ヲ・ニ・カラ・ヘ・ト・デ・マデ・ノ、辺りが格助詞。皆、体言に後接する。この中で「ノ」だけは特別だね。 君:ほほほ、わかるわよ。「ノ」だけは体言同士をくっつけるのに対し、その他の格助詞は全て用言に係るという事ね。 私:その通り。例文だが「僕の彼女」が浮気を彼に(へ)昔から延々と喜んで夜明けまでした。とほほ 君:意味不明。 私:そう、有り得ない、僕の彼女に限って。 君:つまりは格助詞さえあれば語順は自由、これが日本語が英語と違う点なのよね。 私:そう。I give you my love vs. I give my love to you.左七は彼女に愛を捧ぐ、愛を彼女に左七は捧ぐ。 君:今夜は英語は無しよ。 私:おっとそうだった。方言の話にしよう。京へ筑紫に板東さ、その前に「ハダカ格」という概念がある。 君:裸の格、つまりは格形式を持たない、単なる名詞の事ね。 私:その通り。名詞そのもの、といってもいいのかな。日本語は「ハダカ格」の体言に格助詞が後接する事により格が生まれる。古代の日本語は格助詞を持たず、孤立語だった可能性が大だね。 君:孤立語?説明お願いね。 私:世界の言語は大きく三つに分かれる。孤立語、膠着語、屈折語。孤立語とは単語の活用が無い言語で英語が代表。膠着語は日本語が代表で動詞は活用し、名詞も格助詞がついてまわる。屈折語はラテン語が代表で、名詞・動詞共に活用し、且つ、一つの活用形が幾つもの文法的な役割を表す。 君:なるほど、英語が世界を席巻しているのは孤立語という単純な言語だからという哲学的意味があるわね。 私:その通り。英文法なんて二週間もあれば十分だろう。但し、英語を侮るな。子音の数が数万という事で半端な数字じゃない。日本人の英語の発音がなってない最大の理由なんだよね。実際のところ、英語に何個の子音があるかは誰も知らないんだ。英文法学者ですら。AIですら。日々、増加し続けている。そもそもが日本人には英会話は無理。ぶっ 君:今夜は英語は無しよ。 私:おっとそうだった。方言の話にしよう。京へ筑紫に板東さ。 君:いったい何が言いたいわけ? 私:古代日本語、所謂、日琉祖語は限りなく孤立語に近いものだった。「僕、君、好き」。保育園児の孫が三人いるが、彼らの日本語がこのレベルだ。これが古代に格助詞の出現により各々の品詞間の関係性がより明確になり、古語となったって事なんだろうね。若し違っていたらゴメンネ。そして古語の格助詞は現代口語の格助詞とほとんど変わっていない。「にて」が「で」に変わった程度。「城の崎にて」も「城の崎で」も意味は同じ。ただし、時代と共に各地方で格助詞の若干のバリエーションが出現した。あるいは孤立語に原点復帰、つまりは格助詞の省略傾向の方言もある。九州方言では主格「が」を「ぐ」の地方がある。例えば「雨ぐ降る(大分県)」、少し訛っていますね、という問題ではない。「を」「に」の省略は全国各地。飛騨方言では「左七ゃ、彼女好きになってなってまった」とかね。城崎は家内と訪れた事がある。志賀直哉万歳。 君:若しかして今夜のテーマは「愛」かしら。ほほほ 私:あ−い。 君:何を歌舞伎の真似をしているのよ、おバカさん。 |
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