大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

飛騨方言における格助詞の使い分け

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昔から、京に筑紫へ坂東さ、というくらいですから、 このような方向を示す格助詞にはお国訛りがあるのでしょう。 さて飛騨方言では、京に筑紫へ、と言う事はあっても、決して坂東さ、 とは言いません。つまりは飛騨は非坂東です。

ところが先だって、飛騨方言では、先に、の意味で さけ、と言う事を 思い出しました。 となれば、飛騨方言では、あとに・あとへ、 は、あと、と言う事も多いのではないでしょうか。 気になるので内省してみましょう。例えば、
 そんねいそがんでも、あとせりゃええながい。
 (そんなに急がなくても、あとにすればいいでしょう。)

 あと言ってもだしかんぞ。始めにいわにゃ。
 (あとに言ってもだめだよ、始めにいわなくては。)

 あとへ送っても問題の解決にゃならんぞ。
 (あとへ送っても問題の解決にはならないよ。)
 
 祭りのあとへようござったなあ。まんだ酒ゃあるで。
 (祭りの終了後なのによくおいでくださいました。
  まだお酒はありますから。)
 
 おりゃちょっと急ぐで、あとたのむさ。そしゃ。
 (私は急ぎますので、あとは頼みます。それでは。)

 会長の任期が切れるんじゃが、あとおらんのやさ。
 (会長の任期が切れるのだが、あとがいないのです。)

 あとたのむでなあ。はやまかしたで。
 (あとはたのみますよ。もはや、お任ししましたので。)

 どこいくよ? 東京いくんやさ。
 (どこへ行きますか? 東京に行くのですよ。)
 (どこに行きますか? 東京へ行くのですよ。)
の如く、飛騨方言に於いては、 方向を示す格助詞(に)、主格を示す格助詞(は、が)は 省略可能の事が多いようですね。 意味の違いを無視して話すわけではなく、 話の流れ、文脈で文意は決まる、というわけなのでしょう。 格助詞(へ)は省略不可の場合があるようです。

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