大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 近隣の方言

岐阜市方言(2)

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私:表題だが、昨日の記事の続き。
君:今日は更に細かい違いについてのお話かしら。
私:いや、どうして二つの方言になったのか、ザクっと歴史解釈をしよう。
君:美濃は都会、飛騨は田舎。つまりは飛騨が古形で美濃が進化系ね。
私:当たらずと言えども遠からず。近いと言えども当たらず。勿論、共通の祖先の言葉があったに違いない。それは?
君:アルタイ語たる古代和語。
私:そう。こだわる人は倭語の用語を用いる。ユニークなのは飛騨方言は奈良・平安の畿内方言の直輸入という事。理由は飛騨工。律令制における人頭税。各村々から男一人、毎年、数世紀に渡って。延べ数万人とも言われる。
君:すべてそれで説明可能、という事ではないのよね。
私:当然だ。美濃は「いこまいか」、飛騨は「いかまいか」、これは開合の区別だな。明治あたりか。近世語における事件といってもいい。つまりは元の言葉が「いかうまいか」、これが分裂したというわけ。
君:これは五段動詞だけのお話ね。
私:その通り。未然形に二つの音韻があるのは五段だけ。四段には会合の別は無い。従って近世語でそうなっちゃった、と考えるしかない。つまりは意外と最近の事。
君:それでも五段未然の会合の別に関しては美濃方言は共通語と同じなので、やはり飛騨が古形と考える事も出来るわよね。
私:その通り。美濃は都会だ。それに飛騨の人々の間では共通語を話すと、きざな奴、という事で村八分。
君:そのへんは地元の人でなくてはわからない心理学よね。
私:その通り。もうひとつ考えておくべき大切なポイントは飛騨は乗鞍と白山により信州と北陸とは隔絶されていて、言葉が流入するとすれば、北の富山と南の美濃、この二つのルートしかない。どっちのルートが主要かな?
君:富山かしら。距離的に近いから。
私:そう。言葉の伝搬速度は年速一キロ、つまり一世紀で百キロ。富山の言葉はあっという間に飛騨に届く。室町時代にひとつの事件があった。
君:事件?
私:トウモロコシ事件だ。ある年に爆発的に全国に広まった。言葉が追い付かなかった。飛騨には富山経由の唐粟(とうあわ)の言葉が浸透して飛騨方言トウナになり、美濃の高麗キビの名前は伝搬しなかった。
君:なるほどね。
私:さらに大切なポイントと言えば?
君:現代語としてはほとんど差が無くなっているという事ね。
私:その通り。然ししぶとく生き残るというのが方言。
君:つまりはポロッとでるのよね。それにアクセントは自分では気づきにくく、声優を目指す人は大変よね。ほほほ

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