飛騨方言を紹介するステップですが、実は共通語を方言と間違えてはいけませんし、
またありふれた方言ではインパクトが薄いので、そのような方言は
どうにもこうにもネタ切れになった時に発信しようという話にはなります。
が実は、このネット検索が曲者で、情報発信するのに一瞬、迷う場合があります。
どうにもこうにも発信する前に事前にネット検索してもその語が出てこない場合です。
こんな場合に遭遇すると私自身がまず思う事は、あるいはよる年波という事で、
とんでもない勘違いをしているのではと一種、不安を覚えます。次いで、
あるいはこれが果たして飛騨地方で広く使われている方言なのか、
少なくとも近隣の村々で使用されている言葉なのか、あるいは若しや我が家だけで使われていた
戯言(ざれごと)なのかとも思いつつ、最後まで迷いつつ発信する気持ちを察してください。
さて"いぞく"という言葉ですが、米粒を示す大西村の方言です。ネット情報としては皆無に近いのでは
ないでしょうか。また、"いぞく"の語意ですが、田んぼに稲穂が落ちていても
いぞくとは言わず、米粒状にわずかにある炊いた米、つまりはおひつやしゃもじに
こびりついている米粒、早い話が"少量のめしつぶ"の事をいうのです。
ところでネット検索の話に戻りますが、
相馬藩の仕法1(「報徳記」より)http://plaza.rakuten.co.jp/jifuku/5041 に
"一藩俸禄に応じて、多分の米粟(べいぞく)を得て、"の一節があります。また、ルーラル図書館
http://lib.ruralnet.or.jp/yougo/dentou/i.phtml に、いぞくもち の紹介があります。
あるいは佐七の方言・いぞくと同意でしょうか。また、遺粟などという漢字もつい浮かんでしまいます。
さて現実に戻り、いぞくは何といっても、鯉のえさにくれてやる事が多いのです。
つまりは食べ終えたおひつやしゃもじは池で洗い、
そして池の鯉にそらっ食べろと投げてやるわけです。
もっとも、米は無駄にしてはいけないという事で、
主婦がいぞくを食べるのは立派な美徳といえましょう。
がしかし、男がそれをしてはみっともないという事で、
いぞくを食べると婿に行く時に犬に鳴かれる、だから男はいぞくは食べてはいけないという
迷信も聞かされたような気がします。
つまりは、飛騨では家庭の主婦と池の鯉がおひつの"いぞく"を分け合って始末するという少しは面白いお話でした。
しゃみしゃっきり。
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