大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
ちんびくさい(=ちいさい) |
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私:飛騨方言にある形容詞が形ク「ちんびくさい」。これは「チビくさい」の撥音便と捉える事ができる。 君:「ちびくさい」そのものが方言だわよ。青臭い、けち臭い、面倒臭い、みずくさい、等々、一体全体、何が臭うからそんな言葉が出来たのかしらという言葉もあるけれど、これらの形容詞群は主に「においを発する原因物質」+形ク「くさい臭」の複合語よ。例えば磯臭い、おしろいくさい、こげ臭い、酒臭い、まっこうくさい。確かに小さい者・物の総称として「ちび」という体言はあるけれど、これが臭う事はないわ。 私:臭うというよりは、そのような怪しげな雰囲気がある、それを臭気と感ずる、というような意味の言葉はあるね。例えば、胡散臭い。胡散とは、怪しい事・疑わしい事、という意味の漢語だね。ただし「う胡」は唐音だが。「チビくさい」が原義であるにせよ、ちいさい雰囲気があるという意味では無くて、単に、小さい、という意味で用いられると思う。 君:卑罵語に通ずるものがあるわね。あまり使わないほうがいいかしら。 私:それはどうかな。日本人どころか、世界の人々のセンス、意外な事に小さい、という事は、その事を愛らしく感ずる、という感情の事のほうが多いだろう。このちんびくさい携帯によくこれだけの機能が詰まっているものだ、とか。ちびっこのど自慢とか。Oh, it's a small world. 君:「ちびくさい」は意味はいちいち説明しなくても誰もがなんとなく使っている、俗語的な表現という事ね。 私:まあ、そんなところだろう。 君:ただし、あほくさい、田舎臭い、バカ臭い、陰気臭い、辛気臭い、乳臭い(未熟だ)、バタ臭い、味噌臭い、分別臭い、素人臭い、金臭い、かび臭い、生臭い、古臭い、とろくさい、泥臭い、どんくさい、小便臭い、は卑罵語につき、使わないのが無難ね。男くさい、しゃらくさい洒落、人間臭い、は誉め言葉にもなるわね。この数日の世界のニュースとしては、きな臭いウクライナ情勢、これも嫌な言葉ね。 私:然り。ところで「ちびくさい」は全国の方言で、あれこれ音韻変化している。地域は割愛するが、ちんびきさい、ちーびきさい、ちょんびきさい、ちんぶくさい、ちんぶくたい、ちんばくたい、ちんじきさい。ちんびくさい、は岐阜県その他という事で俚言に近い。 君:結構な音韻変化という事で全国共通方言という事も分かるし、古語としては古いわね。 私:まあ、古いと言えるね。角川古語大辞典にあたってみた。「ちびふで禿筆」があった。長く使って穂の先が擦り切れた筆。または自分の文字や文章を検束していう言葉。日葡にもある(Chibifude)。ちびちび(と)、の擬態語が出てくるのは文政期。形ク「ちひさし小」は上古、「おほき(なり)」の対。「ちび」の語源である事は書くまでも無い。 君:小さい発見でも大いなる感動ね。ほほほ |
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