大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

みしとくれ

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飛騨方言にはサ行下一段他動詞が連用形に限って上一段になるという音韻の法則があるようですね。具体的には表題の通りですが「みせとくれ」が「みしとくれ」になるのです。同語をキーワードにネット検索しますと飛騨の童謡「ひなさま見しとくれ」の情報のみでした。ところがこの童謡は郡上市明宝村からも発信があり、おもわず、へえっ、とつぶやいてしまいました。勿論、明宝村でも「みしとくれ♪」の歌詞で歌われるのです。飛騨一円から「みしとくれ」の情報発信があった事はある程度、予想はしていましたが、小生にとっては明宝村は美濃地方のような感覚ですが、意外にも高山市と近いのですね。高山市清見と郡上市明宝を結ぶのが「せせらぎ街道」でオートバイ野郎の聖地です。その峠が「西ウレ峠」、地理的には表日本と裏日本を分ける本州の大分水嶺、日本の屋根といってもよいのですが、ただし、小さな峠につき方言境界にはならなかったようで。

前置きはさておき、内省の検証をしてみましょう。

★サ行下一段自動詞は連用形が上一段になるか・・否でしょう。焦る、褪せる、失せる、消え失せる、逃げ失せる、解せる、ふせる、のぼせる、ませる、むせる、やせる、等々。

★その逆は真か、つまりは全てのサ行下一段他動詞の連用形が上一段になるか・・これも否でしょうね。上一段になる動詞とならない動詞に二分されるようです。というか、以下の14個の動詞が上一段で活用する多数派の動詞のようですね。
  上一段になる動詞・・咲かせる、急がせる、急かせる、言い聞かせる、覗かせる、なかせる、まかせる、およがせる、さわがせる、着せる、持たせる、つかませる、すませる、みせる
  上一段にならない動詞A・・可能動詞、例えば、話せる。「話しとくれ」は有りですが、サ行五段「話す」の連用形です。
  上一段にならない動詞B・・自動詞とと意味の混同を嫌う他動詞、例えば、まぜる、かきまぜる、つきまぜる、おりまぜる、とりまぜる、
  上一段にならない動詞C・・AでもBでもない動詞、多分、着せるの一個だけでしょうかねぇ

★上記の上一段になる動詞は、例えば、連用形+「てまう」表現などでも飛騨方言のセンスにあうか・・多分イエス。例えば、咲かしてまう、急がしてまう、急かしてまう、言い聞かしてまう、覗かしてまう、なかしてまう、まかしてまう、およがしてまう、さわがしてまう、持たしてまう、つかましてまう、すましてまう、みしてまう

方言アマチュアの内省実験ですから、これくらいが限界です。ただし、2020コロナ感染症に伴なう緊急事態宣言にて、GWステイホーム中なので楽しい実験でした。自分の脳にどれだけの飛騨方言が詰まっているのでしょう、興味は尽きません。



蛇足ながら、この動画のトップに出てくる「飛騨のがんどうち」という言葉ですが、がんどうち、とは確か「強盗」+「内」がなまった言葉でしたっけ。ひな祭りとは女子の健やかな成長を願う祭りですが、親の究極の願いは、娘を嫁がせて女の幸せをつかませたい、という事でしょう。つまりは私の勝手な解釈は、強盗とは花婿さんの事です。「ええい、持ってけ泥棒、ただしなぁ、生ものにつき返品お断りだよ。」という意味の「飛騨のがんどうち」、鬼は外・強盗さん歓迎、の歌ですね。

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