大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

とっぺ(豆腐)

戻る

私:我が家では、家内が中日新聞岐阜版を読み僕がネットニュースを読む。何十年もそうやって情報を補い合っている。
君:表題との関係は?
私:家内こそ当サイトの一番の理解者であり、岐大副学長山田敏弘先生が中日新聞に連載なさっているコラム・美濃ことば飛騨ことば、のスクラップを僕にせっせと渡してくれるんだ。愛情をひしひしと感ずるね。本当に感謝している。記事をお書きの山田先生にも。さて、本日のコラムが飛騨方言「とっぺ」だった。
君:今日の表題から察するに、「トッペ」は「トーフ」の音韻変化ですよ、と仰りたいのね。
私:うん。コラムの内容は「とっペ」の語源に「とふ」+「ぺ」の説もあるが、結局は語源は不詳との結論。
君:あなたの考えは?
私:幼児語からの転でしょうね。要は乳幼児にとって大人の言葉「トーフ」は言いにくく、「トッペ」は言いやすい。それだけの事。
君:たんなる思い付きと言われたらどうするの?
私:豆腐の方言量は極端に少ない。全国的に「トーフ」。ただし、富山・飛騨では「トッペ」、熊本で「トッパイ」。白壁に似る事から石川県では「オカベ」。富山・飛騨は地理的に連続するが、九州の熊本とは無関係。この点を論拠としたい。それに幼児語と言えば、赤ちゃんが話し出す十傑がある。わかるよね。
君:ほほほ、そりゃもう。二つあげるとすればパパ・ママね。半濁音はとても言いやすく、赤ちゃんが真っ先に話す事が出来るのよね。
私:そう。ハハ母と言おうとしてもパパになっちゃうんだ。日本で最初のなぞなぞ集「後奈良院御撰何曾」の問題「母には二たびあひたれども父には一度もあはず。答えは くちびる。」古代の母の音韻は実は両唇音たる「パパ」だった。これを発見したのが上田万年・P音考。
君:私、十位を知っているわよ。
私:なんだ、そうか。十位は「アンパンマン」。これも言いやすい。四十になる長女だが、乳児の時にどうしてもグレープフルーツが言えなかった。グレーテプープと言っていた。
君:飛騨では赤ちゃんにせっせと豆腐を食べさせていたのかしら。
私:まあ、そうでしょう。
君:ではおしまい。
私:折角だから豆腐の話を。「トーフ」は中国名「トーフー」を日本読みにしたもの。豆腐は漢の武帝の時、准南王劉安が発明した。准南王万華術の著作がある。日本に伝わったのは鎌倉・室町。下学集に豆腐の記載がある。ついでながら湯葉だが、明治までは「うば豆腐皮」。老婆のしわに似ているから。当然ながら古語辞典は「うば」。
君:ではおしまいね。
私:折角だから最後に一言だけ言わせてくれ。飛騨の名物と言えば「こもどうふ」。ライマンの法則、つまり連濁。「こもどっぺ」とは言いません。意味、わかるよね。
君:ええ、そりゃあもう。大人が赤ちゃんには「こもどうふ」という言葉を教えないから。
私:そうだね。親としては乳幼児には言いやすい言葉「とっぺ」をまずは教える。「こもどうふ」を覚えるのは「とうふ」が言えるようになってからでいい、という親の気持ちからだね。
君:中国の文献はいざ知らず、実はすべてあなたの妄想よね。
私:書きたいから書く。freedom of speech 山田先生からご批判を賜れば、僕にとってこんな名誉な事は無い。
君:岐阜県の方言研究ではトップのお方だけに。ほほほ

ページ先頭に戻る