大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

やたい・屋台

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私:さて今夜は何の話にしようかと思い、動画の検索をして直ぐにビビッと来た。

君:きさくな感じのお婆さん。今夜の話題はみたらし団子の屋台店かしら。
私:いや違う。今夜は屋台は屋台でもあの屋台。
君:ああ、高山祭のからくり人形の屋台ね。
私:そう。動画に当然、出てくるが英語の表記があって EBISUTAI。ショックだった。飛騨高山を離れて50年、屋台の固有名詞を間違えて覚えていただなんて。クスン
君:「えびすだい」だと思い込んでいたのね。
私:そうなんだよ。慌てて公式サイトを見たが、嗚呼、全て清音。高山祭屋台会館の通り。
君:確かにね、診察台とか、手術台とか、実験台とか、普通は濁音だもの。ほほほ
私:寝台列車とか、灯台とか、幾らでもある。慌てて反対語辞典をみたら「〜台」は83個ほどあり、清音は「屋台」以外に「舞台・表舞台・本舞台・清水の舞台」だけだった。要は清音になるのは「屋台・舞台」のみ。連濁の法則(ライマンの法則)からすれば「〜台」は「〜だい」の音韻になるのが普通。つまりは日本語の語彙多しと言えども、「台」に関してはライマンの法則に当てはまらないのは「屋台・舞台」及びその派生語のみかな、と考えたくなる。
君:ちょっとした発見ね。ご苦労様。
私:僕としても郷土の誇り・高山祭の再発見という事になるね。各屋台の正しい呼び方は全て「〜たい」だったとは。
君:飛騨方言ならまかせとけ、なんて言えないわね。屋台の名前も間違えていたくらいだから。ほほほ
私:何と言われてもしかたない。古語の話に移ろう。名詞「台」だが角川古語大辞典には何通りあると思う?
君:さあ。
私:15通りだ。「たい」もあれば「だい」もある。
君:簡単にお願いね。
私:うん。「だい」は呉音で推古朝までに百済を経由して伝わった。仏教語や数詞が多い。「たい」は漢音で隋・唐の洛陽あるいは長安の標準音。奈良時代末には朝廷の推奨する正式な音。官位、地位、に関係する語彙がほとんど。「たいりん台臨」と言えば皇后・皇族がおいでになる事。「やたい屋台」の読みは格式、神聖、特別、のような意味からだよね。つまりはルーツは奈良時代という事になる。庶民に関係した物あるいは近代的なものは全て「だい」。浮世風呂に番台という言葉が登場した事は書かずもがな。
君:要は神様なので「たい台」なのよね。
私:そうたい!(博多方言、男)。

君:「お坊ちゃま君」の台詞ね。わかるひとにはわかる。ほほほ
私:とは言え、高山祭が始まったのは江戸時代なんだけどね。ヤタイ・屋台は日葡辞書に出てくる。Yatai 家の構え、家屋の意味。物類称呼には、東国は屋台、大坂及び西国はだんじり、土佐ははなだい、の記載がある。
君:飛騨は天領、江戸文化直輸入という事が丸わかりね。ほほほ

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