大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

飛騨方言の子音交替(2)

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私:毎晩のように書きなぐっていると、過去に何を書いたか忘れてしまっている。当章の別稿の通りだが、飛騨方言にもそれなりに子音交替の例は見られる。
君:なにをまた、つまらない出だしで。何かあったの?
私:ははは、そうこなくっちゃ。今日は家内のお供でスーパーへ。「今日は沖縄の冷やし中華がお得です。」との館内放送が響いた。
君:なるほど。それで早速に売り場へ行ってみたのね。
私:そう。「オキナワ」ではなく、「オキナヤ」だった。或る食品メーカー。翁屋の字を充てるべきだろうが、仮名表記の会社だった。
君:「ワ」と「ヤ」の聞き間違いね。
私:そう。言い間違い・聞き間違いの連鎖で方言は形成されていく。母音交替は日本語に特有で、研究も多いが子音交替の研究は少ないね。例えば音韻交替と文法的機能分化・意味分化など。
君:飛騨方言の例が無いかしら。
私:早速、調べたよ。土田吉左衛門「飛騨のことば」でヤ行とワ行の全品詞数百個。結論だが、該当なし。結論だが、飛騨方言とて立派な日本語、子音交替は極めて少ない。印欧言語間ではよくみられ、有名なのがグリムの法則。
君:そもそもが日本語の子音交替の例としてはミラ→ニラ,ヘミ→ヘビ程度かしらね。タレ→ダレなどの連濁になると少し数は増えるけれど。
私:ミラ→ニラ,ヘミ→ヘビは上古から近世の間の子音交替、いつからか判然としないね。子音交替が少ない理由として僕が現在の時点で推察している事は、聞き間違いにすぐに気づき直ぐに修正、という機能が働くから、と言う事かな。ヒントがある。幼児語。
君:なるほど。幼児は子音の発音が苦手で言い間違いが普通だけれど、成長するにつれ自然に矯正されていくわね。
私:「ドラエモン」の研究がある。大抵の乳児が「ダエモン」と発音する。ただしゼロ歳児でも「アンパンマン」は言える。同語はなんと幼児が真っ先に覚える言葉十傑に食い込んでいる。
君:飛騨方言でもパターンはあるわよね。
私:清濁あるいは拗音化での子音交替が多いだろう。他にはm-b交替(ひも・ひぼ)、z-d交替(ざしき・だしき)、s-h交替(しち・ひち)、d-z交替(なでる・なぜる)、m-n交替(かみなり・かんなり)など、若干例に留まるね。
君:実は飛騨方言にはy-w交替がないようなので、スーパーの館内放送で翁屋を沖縄と聞き間違えたのはあなたの痛恨の凡ミスね。ほほほ

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