大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

うたて

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私:「うたてい」の語源は「うたた」、さらには「うたうた」である事を記載した。
君:ほほほ、それがどうかしたの。
私:実は講談社「暮らしのことば擬音・擬態語辞典」山口仲美、をよく読むが気になる事がある。
君:具体的には。
私:「うたうた」の記載は無いが「うとうと」の記載があって、江戸時代頃から用いられた語、との説明だ。
君:つまりは「うたてし」と「うとうと」では時代のギャップがあり過ぎるのでは、という疑問ね。
私:古事記、万葉集は「うたた」のみで「うたて」は一切、現れず「うたて」は十世紀の平安時代に突然に出現したらしい、という事で「うたた」の語源は古代のオノマトペ「うたうた」だったらしいが、江戸時代になって「うとうと」と言われてもね。
君:「うたうた」そのものは消滅してしまっていて「うたて」になって近世まで生き延びたから、それでいいのじゃないの。
私:確かにね。付言すると江戸時代になると「うとっ」「うつらうつら」「うっとり」等々が生まれたそうだから。「うとうと」も次いでに江戸時代に生まれた。
君:意味はほとんど同じね。
私:それがそうでもなくて。「うとうと」は浅い眠りが持続する状態、「うつらうつら」は浅く眠ったり覚めたりを繰り返す事の意味らしい。また土佐日記の「うつらうつら現」は、はっきりと覚醒している事を意味していたらしい。
君:想像できるわ、私。心の鏡に映る映る、というわけね。ほほほ
私:「ゆめ」の語源が「いめ寝目」だから、実際のところは推して知るべし。「うつらうつら」が覚醒なのか睡眠状態なのか、文脈から解釈するしかないだろうね。
君:情報が少ないと誤った解釈になるわよ。
私:ひとつ言える事は江戸時代にオノマトペが増えたという事。ところで「うとし疎」(形ク)があるね。
君:重要単語だわよ。「親しくない」「良く知らない」「不案内だ」
私:ところが江戸時代には「うとうと」の影響で「うとい」といえば「ぼんやりしていて頭の回転がよくない」という意味に様変わりしたようだね。
君:浄瑠璃などね。「うたて」「うとし」皆、悪い意味なのに、ひとり飛騨方言だけ「うたてい」がいい意味というのは興味深い事だわ。

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