大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

ひなさまみしとくれ、おぞてもほめるに

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表題は飛騨のわらべ歌ですが、たった一行の短い歌です。ひな祭り前から歌われます。 歌というよりは単なる囃し言葉といったほうがいいかも知れません。 意味については上記の別稿に詳述しました。

さてネット情報によりますと、
ひなさまみしとくれ、おぞてもほめるで
という歌詞も紹介されていましたが、うーむ、いろんなパージョンがあるのかも 知れませんね。ところで、たった一字の違いなれど、私はそこに大変な拘りを持ってしまいます。 ほめるで、とは、ほめるので、である事は書かずもがな。 口語ではほめルンです、などと撥音便になってもよいのでしょう。 ほめるのに・ほめるので、両者にそれでもどれだけの意味の違いがあるのでしょうか。

ほめるので、は実に意味が簡単です。ひな様がみすぼらしくてもほめますからみせてください、という 単なる条件文ですね。強いて言外に意味があるとすれば、あまりにもみすぼらしければほめないかも知れない、 という事でしょう。 一方、ほめるのに、という言い方は意味が実に深いのです。 話し手の強い意志・願望を表現する言い回しとも、反語的な言い回しとも考えられます。 つまりは言外の意味が多い言葉という事ですね。例えば、
  • (まだ見た事がないけれど、どんなにみすぼらしくても必ず)ほめるのに
  • (去年と同じのみすぼらしいひな様でも、それでも必ず)ほめるのに
  • ほめるのに(何故もったいぶって見せてくださらないの、ああじれったい。)
  • ほめるのに(それなら見せてくださいますね、絶対よ。)
ですから、このように言外に多くの意味(大別すると、必ず褒めますという強い意志、みせてもらっていないもどかしさ、の二つでしょう)があって、少々わかりにくい言い方だから、 という事で、ついつい、ほめるで、という単純明快な歌詞も出来たという事なのでしょうよ。 しゃみしゃっきり。

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