大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心理学 |
いまいましい話 |
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僕:今日の話題は表題の通りなのだが。 君:あなたは昨日まで語源とか、音韻とか、アクセントとか、楽しんで書いていたのに。今日はまた何故このコーナーなのかしら。 僕:実にいまいましいからだ。 君:ほほほ、変な事を書くと、ただでさえ少ない読者の方々を失う事になっちゃうわよ。楽しい、ほのぼのとしたお話でなくちゃ。 僕:順番に話して行こう。例によって夕飯を済ませ、寝る前にさてサイト記事でも書こうかな、とDMM英会話のCMのノリで机に向かったんだ。 君:それで。黒人さんにお逢いできたの? 僕:からかわないでくれ。まずはネタ探し。ネット検索。数分したら、おっ出てきた、滋賀県立図書館。クイズ、もったいないという意味の全国各地の方言ですが、どこの地方でしょう?正直にお話しすると全問不正解というか解答できず。三番「いまいましい」は実は飛騨の方言です、の解答を見てびっくり、えっそんな事は知らないよ。 君:自分はネイティブだという自負があったのに、つまり自信喪失ね。 僕:そうなんだよ。あわてて手元資料を検索してみたら、なんと飛州志における飛騨方言に既に書いていた。 君:つまりは老人性痴呆の始まり、例え十年ほど昔の記事とは言え、ご自身がお書きになった記事の事をすっかり忘れてしまっていたという訳ね。 僕:その通り。だから、その事が僕にとってはいまいましい。バカバカ、俺。 君:なあんだ。そんな事ね。でも高校時代の国語の事とか、結構、覚えている事もあるじゃない。 僕:いや、ほとんどの事は忘れたな。今、大学受験の問題を見せられたら間違いなく零点だろう。答案に書けるのは自分の名前だけだ。いや、その前に、広いキャンパスなら無事に試験会場にたどり着けるかどうか。 君:それ以前の問題として、試験日を間違える可能性があるわよ。 僕:教養部時代に実際に仕出かした事がある。試験日を一週間、間違えてしまったんだ。物理。つまり試験を受けなかった。前期半年の間に三回の試験があった。つまり期末の一発ではなく、細切れ試験。一回目、二回目は満点だった。三回目が試験日を間違え零点。評価は不可。未だにトラウマだ。生涯、忘れる事は無いだろう。今日の方言クイズの話に戻るが、例え死語とは言え、飛州志の「いまいまし」を忘れていた事は痛恨の極みだ。 君:ぼやくのはやめて前向きになりなさいよ。「いまいまし」形シクは古語の重要単語よ。 僕:そうだね。江戸時代の飛騨方言「いまいまし」、つまりは「もったいない」の意味は「いまいまし」形シクには記載が無いね。「いまいまし」形シクは基本的には現代語に通づる言葉だが、ひとつに、(美味しいものが食べられない等によって)「残念だ、しゃくにさわる」の意味があるが、これが江戸時代の飛騨方言では何と正反対の意味になってしまったようだね。つまりは「目の前にあり、然も自分にあてがわれた美味しいものをあっさりと食べてしまう事は、あまりにももったいないので、食べないで我慢すべきだ」と言う意味でもあるし、「普段は食べる事が出来ないこんなに美味しいものを食べられてなんて幸せなんだろう」という意味でもあるだろう。どちらにせよ、美味しいものを食べる前の喜びか、美味しいものを食べた喜びを表すのが江戸時代の飛騨方言「いまいまし」なので流石にお代官様・長谷川忠崇はビックリなさって書に著したという事なんだね。 君:つまりは「いまいましい(もったいない)」は現代語としては死語であり、飛州志に記載があるだけなのね。 僕:というか、日本方言大辞典全三巻は古今のありとあらゆる方言語彙を収載しているので、これをご覧になった滋賀県立図書館様が、死語とは知らずに、ついつい、あんな問題をお作りになったというのが事の真相だろう。僕が解けないような飛騨方言の問題は問題の体をなしていないと思う。不適切な出題だと思うけれど、滋賀県立図書館様が飛騨方言を取り上げてくださった事自体はこの上なく名誉なことだ。それに、今回の件は、僕にとっては飛州志の記事はじめ、過去に書いた記事をもう一度、読み直してみようという動機づくりになってくれた。どんどん書くのは良い事だが、どんどん忘れていく事は好ましい事ではないからね。 君:似た言葉で重要単語に「ゆゆし」形シクがあるわね。こちらは良い意味にも悪い意味にも使われる古語だから手ごわいわよ。その点、「いまいまし忌々」形シクは「いむ忌」他マ四、つまりタブー視を重ねた言葉だから悪い意味以外にはなり得ないわね。ただし滋賀県立図書館情報、つまりは江戸時代の飛騨方言は別ね。ほほほ |
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