大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム しびれる言葉

あっ、そしゃアソシア

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私:故郷は遠くなりにけり。テレビ番組「所さん大変ですよ」じゃないけれど、今、高山市が大変な状態になっている。
君:だから表題という訳ね。
私:そういう事。単なる語呂合わせというか、駄洒落だが、飛騨方言検定問題としてふさわしい良問じゃないかと思う。
君:全国の皆様には「そしゃ」がお判りにならないわね。
私:「さうせばや」辺りの短呼化だろうね。現代語共通語訳としては「そうすれば」という意味。
君:つまりは「あっ、それならばアソシアにしましょう」と言う意味ね。
私:その通り。「アソシア」と言えば何か、こんな質問ならわかるよね。
君:ホテルグループね。つまりは「あっ、それならば(ホテルは)アソシア(にしましょう)」という意味なのよ。
私:ご名答。ホテルマリオットアソシア名古屋と言えば、名古屋駅と一体化した名古屋を代表するホテル。実は僕は高山市にもアソシアがある事を知らなかった。
君:あら、そうなの。名前からして素敵なホテルを思わせるわ。
私:その通りだ。実は昨晩、宿泊した。ご存知、コロナの感染は下火、緊急事態宣言も解かれ、世の中が観光再開の方向に向かっている。高校時代の気心知れた友人五人で宿泊がてらの同窓会。
君:楽しかったのね。ほほほ
私:ああ、楽しかった。ただしアソシアという華やいだホテル名の語呂合わせなので、一応は「しびれる言葉」の項目の記事として書く事にしたが、僕の気持ちは複雑だ。
君:えっ、どうして?
私:それを僕に言わせようというのか。実は・・高山市を代表するホテルは最早、グリーンホテルではない。アソシアだ。
君:つまりは、あなたが言いたい事は、昔はグリーンホテルが高山市を代表するホテルだったのに、という寂寞感から逃れられないという事ね。
私:そう、逃れられない。誰だって自分たちの思い出のホテル、例えば、結婚式をあげたとか、思い入れがあるホテルが倒産したり、経営が傾いたりしたらいやだろ。
君:あら、グリーンホテルが斜陽化しているという事?最近、高山には行っていないわ。
私:ははは、ご心配なく。斜陽化なんかしていない。新館がオープンしたし、今も昔もグリーンホテルはグリーンホテル。時々は家内と高山へ遊びに行くが、食事はグリーンホテルに決めている。定宿といってもいい。
君:アソシアホテルに気づかなかったのね。
私:そう。存在は数年前から気づいていた。松倉山に新しいホテルが出来てるな、部屋数が多いが安っぽいビジネスホテルなんだろう、くらいに思っていた。
君:宿泊してどうだった?
私:素晴らしいホテルだね。北アルプス全体のスカイビュー、それに高山の街並み全体を見下ろす事ができる。当然ながら夜は高山の夜景。景色だけはアソシアに敵うホテルは無い。昨日チェックインした時は快晴、乗鞍、穂高、笠ヶ岳、立山連峰が一望できた。冠雪が夕焼けで赤く染まっていた。
君:あらそうだったの。北アルプスは夜のとばりも素敵だったでしょ。
私:その通り。
君:あなたの気持ちが複雑なのが私にはわからないわ。
私:男は記憶のカードが増えるが、女は記憶のカードを塗り替える。
君:記憶とは男女の出逢いの事ね。
私:そうだよ。日本中のホテルの中でも僕にとって一番大切なのがグリーンホテルというカード。若し僕が今、仮に独身だったとしてお見合いデートの待合場所に選ぶとすれば迷う事なくアソシアにしていただろう。
君:あなたは迷う事なくグリーンホテルを選んだ。四十年前の事。決断したのよ。
私:そう、決断だ。世間様にはどうでもいい事だか。ところで、つまりは「あっ、そしゃアソシア」を意訳しないとね。「ではお見合いの待ち合わせはアソシアホテルのロビーで」。ぶっ
君:親父ギャグ。
私:自虐ギャグ。脱線し過ぎたな。真面目に行こう。「そしゃ」について語ろうぜ。
君:「さうせばや」を品詞分解するのね。
私:勿論。副詞「さう然」+サ変動詞「す為」の未然形「せ」+接続助詞「ば」+間投助詞「や」ってなところだね。つまりは「ばや」は複合助詞だ。「ば」は活用語の未然形・已然形に接続するので「せ」はサ変の未然形で決まり。「や」は体言または活用語の連体形、助詞など文中の種々の語に接続する。「さうせばや」の音韻変化だが、「ば」の脱落により「さうせや」、これが飛騨方言「そしゃ」に化けるのだが、四モーラ副詞から二モーラ副詞へと、一発変換した言葉に違いない。以上は推論、どこにも書かれていない。本邦初公開。左七がかってに思い込んでいるだけ。若し間違っていたらゴメンネ。
君:そしゃそやさ(=あなたのおっしゃる通りかも、多分そんなところね)。ほほほ

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