大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム しびれる言葉 |
金蔵獅子(きんぞうじし) |
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私のこのサイトは方言学、つまりは国語学の下位分類の事を主に書いていますが、少なからず飛騨の民俗学についても触れています。戦前に柳田國男先生がおられたころは民俗学も方言学も混然とした古き良き時代だったのですが、東条操先生はじめ東京帝国大学の諸先生方が日本語諸方言の研究を徹底的におやりになり、方言学は民俗学と分離され、方言学の場において民俗学を語るのは邪道という事になってしまいました。 当サイトはそういう堅苦しい場ではなく、エンタメ・癒し系の場です。ところで先ほど「金蔵獅子」をキーワードにおよそ数百件、ネット検索したところ、ほぼ百パーセントが飛騨からの情報発信でした。一部、富山県からの情報発信もありますが、飛騨神岡から伝わったと明記されているサイトが多く、「金蔵獅子」は飛騨オリジナルの文化・言葉と断言せざるを得ないですね。「金蔵獅子」は岐阜県の無形文化財にも指定されているそうです。どうやら、飛騨以外の読者の皆様の常識は飛騨で生まれ育った私のような人間の非常識、という事に気づいたので以下に列挙しましょう。飛騨以外の読者のおかたにはお役立ちのルルブ情報です。 ★獅子舞はお正月の縁起物、というのが一般的でしょうが、飛騨では正月に獅子舞が町内をねり歩くという事ではなく、例外なく春あるいは秋の村祭りに奉納されるショウです。 ★その獅子舞ですが、村々でバリエーションがあるのですが、典型的といってもいいパターンが「金蔵獅子」です。「金蔵」は正義の味方、スーパーヒーローで一般的には天狗のお面をかぶった人の化身で、槍などの武器を持っています。実は彼にはフィアンセがいて「おかめ」です。おかめのお面をかぶった女装の人の化身です。この「金蔵」と「おかめ」の最強コンビが悪の権化「獅子」をやっつける、というショウが「金蔵獅子」です。どうです、わくわくするでしょう。 ★「金蔵獅子」が代表的ショウですが、他に(if I remember correctly)「高山」「はち」「おまえ」「ひとつあげ」「ふたつあげ」「曲」「かけあい」「マムシ捕り(へんべ捕り)」などの演目があり、各村々の村祭りでこれら全ての演目が上納されるかと言えば、そんな事は無く、第一に一日で終わる村祭りに全てを上演するのは時間的に無理ですね。 ★飛騨の村々には必ず村祭りがあり、ほぼ例外なく日曜日に開催されるでしょう。ぶらりと飛騨をレンタカーで旅行されると運よくどこかの村の村祭りをご覧出来る可能性があります。私の場合、オートバイ一人旅、飛騨は広い、まだ全部の村祭りを見ていませんが、お祭りオタクの私自身は癒されます。飛騨の村祭りと言わず各地のお祭りが大好きな私です。 ★「金蔵獅子」が飛騨の各村々に急速に広まったのはどうも明治のようですね。そもそものルーツは江戸時代で、高山市一ノ宮町の「水無(みなし)神社」です。道理で各村々でワンパターン。「水無神社」はアニメ・氷菓の生きびな祭りに出てくる神社で、飛騨の中の神社中の神社、神社の王様です。村々の神社は全て「水無神社」の分家なのです。飛騨の神社をひとつだけお参りしたいお方は「水無神社」参拝で決まり。それ以外の選択肢はありません。蛇足ながら飛騨の高山祭の仕掛け人というか発案者は国学者・田中大秀です。 ★先ほどユーチューブコンテンツも沢山チェックしましたが、気づいた事がひとつ、女子の進出です。「金蔵」は勿論、「おかめ」ですら男性が演ずるのが常識、歌舞伎の世界と言ってもよいのですが、少子化でショウを成功させるには村の男が総出演しても人手は足りず、笛のお囃子に女子の手を借りないと成り立たなくなっているようですね。 「金蔵獅子」以外に村祭りに必須なのが「シャーマン」「闘鶏楽」ですが、別の機会にまたお書きしましょう。コロナ災禍で春の祭りは軒並み中止されている可能性あり、電話でお確かめなさるのがよいでしょう。 |
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