大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
はしかい(目がかゆい) |
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私:「か」で終わる和語の単純名詞に「い」を付けて出来る形容詞と言えば、高い、深い、等。今夜はそんな話だ。 君:でも、飛騨方言では「かゆい」の意味で「かい」という事もあるのじゃないかしら。 私:「かいー」と発音する人が多いので共通語といえなくもないが、実は違うんだ。品詞分解すると「はしか・い」であって、「はし・かい」ではないんだ。 君:ではまず簡単に結論を言ってね。 私:「はしかい」は「かゆい」の意味で全国共通方言になっている。特に目に限る言葉としては、飛騨方言がユニークで、他の地方では体の他の部分がかゆい場合も使う。語源は古語名詞「はしか芒・秕」による。意味は、イネや麦の実の先にある針のような毛。のぎ。ノギは禾部(かぶ、のぎへん)。 君:病気のハシカとは違うのね。 私:「はしか芒秕」は和語で、病気のハシカは平安時代は「あかもがさ赤疱瘡」と呼ばれ、近世語としては「はしか麻疹」。「はしか麻疹」の語源は「はしか芒・秕」と考えるのが語源学の定説だ。 君:実ったイネや麦の実のチクチクする部分が「はしか芒秕」で、最初に名詞ありき。「はしか芒秕」から形ク形容詞「はしかし」も生まれたし、病名「はしか麻疹」の語源でもある、という事ね。 私:「はしかし」は抽象形容詞にて、古語ですら、かゆい・痛痒い・すばしっこい・じれったい・歯がゆい、等の意味があるし、全国各地の方言としても意味は百花繚乱。「目がかゆい」という意味は飛騨方言だけ。音韻変化としては「はしかゆい」という地方もある。何と言っても日本語の歴史の理解に役立つのが沖縄県の言葉。ぱつぃこーはーん(痒い、石垣島)、ぱつぃこーぎさん(気が強い、首里)、等々。 君:なるほど、日琉祖語というわけね。 私:弥生文化といってもいいね。稲作や麦作を南の海洋民族が日本本土にもたらしたのかな。 君:九州辺りに上陸し、南へ北へ広がったかもしれないわね。 私:わからないね。それに「はしか芒秕」の語源そのものも。「はし端」のような気もするが、和語は「は端」、南西諸島では梯子の事を「ぱつぃ・はっつぃー」などと言う。あまり考えすぎないほうがいいだろう。 君:当り前よ。芒・秕と麻疹のお話で十分よ。ほほほ |
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