大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

かやしこむ(転げ落ちる)

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私:飛騨方言動詞かやしこむ、は自マ五(自動詞マ行五段)。意味は、転げ落ちる。語源の推察は、わかるひとにはわかる、容易だね。
君:複合動詞ね。自サ五(自動詞サ行五段)かやす+自マ五(自動詞マ行五段)こむ、と言ったところかしら。
私:その通り。
君:問題は、かやす、の意味ね。古語辞典にあるわ。動サ四かやす。「かへす返」の転。中世語ね。
私:そうなんだよ。全国共通方言というわけだ。「ひっくりかえす」という意味で東海地方から西の広い範囲で使われる。
君:問題は自他の別ね。
私:正にその通り。「かへす返」は他動詞。「かへる」は自動詞。飛騨方言でも、自転車をかやす(自転車を倒す)、というように他動詞で用いる。その一方で「かやしこむ」は自動詞であり、つまりは、自身がひっくり返る状態になる、の意味で用いる。理論的には「かやりこむ」になってもよさそうな感じだが、飛騨を初め、全国の何処にもそのような言い回しは無い。ただし「返る」は、かやる、きゃーる、かよる、かやれる、等々の音韻変化として全国の方言になっている。
君:こむ、には、トコトン続く、の意味があるので、かやしこむ、トコトンひっくり返る、つまりは転げ落ちる、という意味なのよね。
私:その通り。但し、単独で他動詞「かやす」が複合動詞「かやしこむ」になって自動詞だから、語源の難易度としては中程度だね。「こむ」について深堀りしたければ、複合動詞「〜こむ」の程度深化の用法へ go。
君:なるほど。ところで飛騨方言では「かやす」は複合動詞の後項動詞で使えるかしらね。
私:うん、使えるね。この場合は他動詞になる。投げかやす、とか、跳ねかやす、とか。
君:またその一方、飛騨方言で前項動詞「かやす」が他動詞になる例ってあるのかしら。
私:あるよ。「かやしおとす」は、真っ逆さまに落とす・転げ落とす、の意味だ。
君:「こむ込」は自動詞、「かやす返」は他動詞。つまりは複合動詞に於いては後項動詞が自他を決定するという訳ね。ただし、投げ込む、は他動詞。入れ込む・入り込む、は共に自動詞。ほほほ

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