大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
のま(=なだれ雪崩) |
戻る |
私:なだれ雪崩の事を飛騨方言ではノマというんだ。と言っても死語に近いだろう。 君:確かに。聞いた事ないわね。飛騨の俚言かしら? 私:いや、各種方言資料によると、富山と飛騨の方言。意味は同じ。つまりは春の表層雪崩。すべてが悉く雪に呑み込まれてしまう事を言う。 君:広域方言というわけね。それに両県は峠を一つ隔てた隣同士なのよね。 私:古語辞典にあたってみたが、残念ながら語源と思しき語彙はみつからなかった。 君:それなら自分で考えるしかないわね。 私:うん。然しながらそれをやっちゃうと単なる民衆語源という事になる。例えば落語。ヤカン薬鑵(やくくわん)の語源は矢が当たってカンと音がしたのでは、とか。元々は薬を煮るのに用いた事からいう。 君:では、何らかの客観的資料をお示ししたい、という事で語源を考えてみたというお話なのかしら。 私:その通り。方言動詞・のまえる、というのがある。川の氾濫に呑み込まれてしまう事。栃木、富山、石川、山口、高知、島根。 君:わお、これは広域方言どころか、全国共通方言ね。然も地理的に関係ない複数地方で自然発生した言葉。その心と言えば、動詞・のまれる、の子音交替。 私:然り。意味はそのままで言いやすいほうに音韻だけが変化したというわけだ。言語学でいうソシュール学説だね。 君:つまりは、のま(=なだれ雪崩)の語源は方言動詞・のまえる、の語幹なのではという考えね。 私:そう。語幹というか、あるいは語根といってもいいね。 君:確かに川が氾濫する事と大雪崩はイメージ的にあっているわ。 私:残念ながら証拠はない。各地に方言として散見されるだけ。飛騨方言を知るのには飛騨の資料を見ているだけ真実に到達できるとは限らない。情報は多いに限る。 君:つまりは貴方の方法論には限界というものがあって、書斎の中であれこれ思索しているだけの仕事。つまり出版物の資料だけが頼りなのよ。 私:chat GTP そのものだね。創造的な仕事とは言い難い。 君:本に呑まれて。 ほほほ |
ページ先頭に戻る |