方言学に、誤れる回帰、と言う用語があります。同語でネット検索しても情報は極めて少なく、(ちょいと聞きかじり、実は一夜漬け)不肖佐七の方言学用語一覧が上位にヒットするとは、あららお粗末様。
別名は過剰修正、ともいうのですが、こちらは莫大な数がヒットし、方言学の用語が埋もれてしまっています。しかし、ここで諦めてはいけません。過剰修正+方言、をキーワードにネット検索しますと、ただいまグーグルで七千件ほどヒットしており、しかもこれがまた正に必要としていた情報と言う事で、ふーむ、つまりはネット図書館には方言学上の過剰修正という華麗なる大海原が広がっていたのでした。
以上が前置きです。今夜は佐七が、その大言海にひとつの言葉を足しましょう。やくわざ、です。さて飛騨方言では、わざと、の事を、やくと、と言うのです。そして飛騨方言では、わざわざ、の事を、やくやく、と言うのです。やくと、やくやく、共に古語辞典に記載のある日本語としては由緒ある言葉です。飛騨方言のみならず全国各地の方言になっている事が容易に想像されます。
ここまで書けばお察しの良い方にはご説明するまでもありませんね。やくわざ、とは佐七がふざけて作った言葉です。共通語・わざわざ、でもなければ、飛騨方言・やくやく、でもありません。が然し、実はここがミソ、わざわざ・やくやく、共に頭高のアクセント▼○○○である為に、頭高の造語・やくわざ▼○○○、を聞けば飛騨方言が母語である人ならば瞬間的に意味は通ずるはずだ、というわけなのです。
それでも、ここまでで終われば小学生の作文でしょう。パロールとでも言うべき佐七さんちの戯れ言葉・やくわざ、が果たして日本語圏に存在するか、という命題が本題です。早い話が、やくわざ、をキーワードにネット検索。佐七はその結果に思わずニンマリしちゃいました。だから方言研究はやめられません。
個人の名誉のために、どんなサイトがヒットしたのかは伏せておきましょう。ご興味ある方は各自でお試しあれ。実は先ほどですが二件ヒットしました。個人が発信する情報、つまりブログの類です。キーボードの位置関係からタイプミスでない事は明らかです。また文章内容から御両人は、誤れる回帰・わざわざ、である事に露ほども気付いていらっしゃいません。
この貴重な二件の情報発信ですが、やはりその地方の方言として、やくと・やくやく、が話されているに間違いないと佐七は確信します。創造した言葉が、やくわざ、とは到底、考えられません。文章内容からお二人とも文筆業でない事は明らかです。本日は、やくわざ、が方言学上はラングである事が確認されたのでした。スラング?
さて飛騨方言では、さようなら、という挨拶を、あばえな、と言いますので、あばなら、とふざけて話しても飛騨人の間では瞬時に意味が通ずるはずですね。誤れる回帰・過剰修正、とはそのような話題なのでした。 誤れる回帰・過剰修正のテレビ版・チャマ語 おまけですが、何十年も前、テレビでお坊ちゃま君というのをやっていて、当時は愛娘が子供だったもので、つい親子で観ていましたね。あら、あなたも!いいなけつ(=いいなづけ)、ともだちんこ、あたまにきたはんきゅう、等々、全て歴史のかなたに。日本語として残った語彙は振り返ってみるとゼロか。当たり前の事だけれど。
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