大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法 |
直示(deixis) |
戻る |
私:最近の国文法の書で目立つようになったのが表題の単語。 君:あら、あなた流におっしゃるなら学術語じゃないの? 私:確かに学術語的な言葉だね。 君:英文法からの借り物の概念という事で、日本語としてはあまり認知されていないという事かしら。 私:この辺りからの概念らしい。 Fillmore, Charles J. (1966). Deictic categories in the semantics of 'come'. Foundations of Language, 2, 219-227. Fillmore, Charles J. (1982). Towards a descriptive framework for spatial deixis. In R. J. Jarvell & W. Klein (Eds.), Speech, place and action: Studies in deixis and related topics (pp. 31-59). London: Wiley. 君:取り敢えずは当サイトでは無視できる概念。 私:いや、それがそうでもなくて。日本では2000年前後から使われだした。今や日本語教育能力検定試験、言語聴覚士試験などという国家試験に出題される内容らしいね。 君:それじゃ簡単に説明して。 私:直示とは指示代名詞の一部だ。これだけで概念が判ると思う。意味論、語用論から考え見て。 君:直接示す指示代名詞とは、これ・それ・あれ。つまりは近称・中称・遠称の事ね。不定称は直示とはいわないわね。 私:そのとおり。直示とは「こ・そ・あ」の事。文脈に依存して指示対象が決まる表現の事。ところが英語の deixis は実は日本語的には「こ・あ」であり、つまりは英語には「そ」がない。 君:ほほほ、日本人の中学生でも知っているわね。英語にあるのは this / that の二つだけ。 私:Yes, that's what I'm telling you。In considering the difference between English language and Japanese language, this is a very, very important and fudemental aspect of the word deixis. 君:英語の概念を無理やり日本語に当てはめる事もないわね。あなたのこの英文章からも言える事は、日本語の「そ」は英語では this / that のいずれにもなり得るわね。 私:まあ、そんなところだ。日本人は英米人の言語学者に引け目を感ずる必要は無い。直示に相当する概念は三上章が deixis に先立って1953年に出版した「現代語法序説」に「記号の境遇性」という学術語で既に記載しているんだ。ところで飛騨方言に関しての話題となると、「あの時分」という言葉はあるが、「この時分」や「その時分」はアウトかな。このような論述の国語論文が多い。それと、結構多い論文が日英語比較。安易すぎるよ。ぶっ 君:畏るべし三上章。チャールズフィルモア先生は米国の三上といったところね。 私:チョムスキーも米国の三上だ。 君:アメリカには三上が二人いる。ほほほ |
ページ先頭に戻る |