大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

テンス・継続相

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佐七:飛騨方言のテンス、継続相について話そう。
家内:わかりやすい簡単な話でお願いね。
佐七:勿論。テンスなんて片仮名がよくないけど、言語学の言葉、過去・現在・未来、要は時相だ。継続相とは、〜しています、という言い方。
家内:ここは言語学コーナーだから英語の話題も出てくるのよね。
佐七:うん。中学程度の英語の話なら良いだろう。でもないかな、お袋だ。英語と言えば、カレーライスとハンドバッグ位しか知らないから、女には難しいかも。
家内:読者の方々の層がはっきりしないのは確かにつらいわね。
佐七:かまわず行こう。飛騨方言の継続相は、書きょうる、という言い回しだ。英語ならばI am writing. あなたは生まれも育ちも名古屋。名古屋方言でも使うかい?
家内:書きょうるなも、と言うわ。使うわよ。
佐七:うーむ、失礼、実は知っていたんだ。ここに論文がある。東大出版会の日本語学と言語教育という書、工藤真由美女史の、文法化とアスペクト・テンス、の章。西日本方言を渉猟した資料が紹介されている。逆に言えば、少々意地悪い言い方も知れぬが、東日本にはアスペクト・テンスに関しては系統だったものがなくて、どうにもこうにもまとまらない、えいままよ、という事で西日本方言だけでストーリィをお作りになったのだろう。僕は行間をそう読んだ。
家内:西日本方言は継続相の花盛り、という事のようね。しかも同じ形式、書きょうる、なのよね。
佐七:図星だ。書きよる、という事も多いようだが。飛騨方言も名古屋方言もこのテンスを持つ方言の東の果てなのだろうね。また、つい先ほど古語辞典をみた。よる自ラ四、なんてのは最重要品詞だね。ずらっと十幾つ意味がある。寄る、つまりは近づく、という意味の複合動詞から出発したのじゃないかい、かきょうるは書き+寄る、が語源だろう。
家内:ほほほ、ご名答よ。言語学なら英語もチョッピリお話しなさって 終わりになさいませ。
佐七:ははは、のぞむ所だ。さっきだが、Webster's New World Dictionary を引いた。なんと -ing を引いたのさ。中世の英語では -yng -end -and -ind古代英語では -ende などと書いてあったぞ。write は中世は writen、古代は writan これらを活用すればよい。古代の英語の継続相を調べたくなってしまったよ。
家内:でも、何年もお調べになったのならともかく、数分ほどペラペラと辞書を見ただけの事でしょ。思わぬはじをおかきになっても・・夫婦だけの会話にしておきましょうね。

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