飛騨方言では形容詞はウ音便化するのが普通です。
既に全国の方言サイトには形容詞のウ音便が語られているサイトがありますので、
筆者は飛騨方言について何をかいわんや、でありますが、
飛騨方言における形容詞のウ音便化、なかんづくイ列形容詞の連用形の挙動について
筆者なりに気づいている事があります。以下に順次、論述します。
(あ)まず、ア行イ列形容詞ですが、これは例えば、いい、という形容詞は、よくなる、と活用し、
飛騨方言ではウ音便化し、ようなる、と話されます。
他に思い浮かべられるア行イ列形容詞がなく、
例えば、金離れいい、ということば、は、飛騨方言ではウ音便化し、金離れようなる、と話されます。
(か)次いで、カ行イ列形容詞ですが、これは例えば、おおきい、という形容詞は、おおきくなる、と活用し、
飛騨方言ではウ音便化し、おおきゅうなる、と話されます。
また更には、飛騨方言では更に訛り、おおきょうなる、と話される事が実に多いのです。
飛騨方言では更にまた、これが訛って、う、が脱落して、おおきょなる、と話される事すらあります。
知らん間におおきょなって、はや、父ちゃんより背が高いながい!
という会話文例ですが、"知らぬ間に大きくなって、すでに、親父さんより背が高いじゃないか!"、という意味です。
(さ)以下、サ行イ列形容詞では、例えば、美しい、は、うつくしゅうなる、うつくしょうなる、
ともに用いられます。あるいは、うつくしょなる、とも言います。
(た)ところがタ行イ列形容詞では、該当形容詞は一個のみのようですが、ばばっちい、は、ばばっちょ(う)なる、が用いられ、〜ちゅうなる、は用いられません。
(きたない話でごめんね。)
(な〜わ)ナ行からワ行にいたるイ列では、該当形容詞無しのようです。
(ら)ラ行イ列形容詞について付記しますと、例えば、古語・けなり、から派生した、けなりい、は、
飛騨方言ではすでに、けなるい、に変化しており、
けなるうなる、以外の活用はありません。わりい(=わるい)、も飛騨方言にはありません。
飛騨方言では、わるい、がウ音便化し、わるうなる、更には、わるなる、ともいいます。
飛騨方言では全てのラ行"イ"列形容詞は、すでに"ウ"列に変化していると筆者は考えます。
以上を総括しますと、飛騨方言におけるイ列形容詞の連用形のウ音便則は以下の如くです。
(1)ア行イ列形容詞(例えば、いい)においては、かつて存在したのか"ゆう"は消滅し、"よう"が現存する
(2)カ行とサ行のイ列形容詞のウ音便 "ゅう" は飛騨方言では、更に訛ってむしろ "ょう" と発音される
(3)タ行イ列形容詞は該当するのは、ばばっちい、の一語のみで "ゅう" は消滅、 "ょう" と発音される
(4)ラ行イ列形容詞・けなりい、わりい、は語そのものが消滅、既にオ列に変化しており、これがウ音便化し、けなるう、わるう、となる
(5)ウ音便化した形容詞であるにもかかわらず、う、そのものがまたしばしば脱落する。
更にこれを一言でまとめると、飛騨方言は、形容詞がウ音便化する他の地方に比し、
更にいっそう形容詞のウ音便が進化している 事が特徴であると筆者は考えます。
追記 皆さんに質問ですが、"イ列ウ音便"でネット検索してもヒットゼロ、これって私の造語??
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