飛騨方言において、何々するな、何々しないでください、という意味の表現法は
共通語と同じようなパターンがあります。
以下によく使われる言い回しのみを記載します。
明確な男女の言い方の違いがあるとはいえ、男性がわざと女性の言い回しを使う事も、
またその逆の事も勿論あります。これも共通語とて同じでしょう。
動詞の未然形
+古語助動詞・ぬ、の撥音便・ん
+古語助詞・にて、と同じ助詞・で
+好意の動詞・くれる、の命令形・くれよ、の訛り・くりょ
(+飛騨方言特有の男性宣言終助詞・((1)い ないし (2)よ) )
男性のみ用います。飛騨方言らしい表現になります。
例えば、サ変゛ですが、せんでくりょ、(1)せんでくりょい、(2)せんでくりょよ、などです。
動詞の未然形
+古語助動詞・ぬ、の撥音便・ん
+古語助詞・にて、と同じ助詞・で
+古語動詞・おく、の連用形・おきて、のイ音便の濁音化・おいで
+好意の動詞・くれる、の命令形・くれよ、の訛り・くりょ
(+飛騨方言特有の男性宣言終助詞・((1)い ないし (2)よ) )
男性のみ用います。飛騨方言らしい表現になります。
例えば、サ変゛ですが、せんでおいでくりょ、(1)せんでおいでくりょい、(2)せんでおいでくりょよ、などです。
また更には、これらが連母音融合し、せんどいでくりょ、(1)せんどいでくりょい、(2)せんどいでくりょよ、
というのがむしろ一般的な言い方でしょう。
動詞終止形+禁止の終助詞・な
共通語と同じですが、男性のみ使用します。俚諺動詞ですと、飛騨方言らしい表現になります。
例えば、サ変゛ですが、せるな、講ぜるな、などです。
ラ行動詞終止形は撥音便になる事が多いのが特徴です。
飛騨方言におけるラ行動詞の撥音便
をご参考までに。例 やるな−>やんな、みるな−>みんな、蹴るな−>けんな、来るな−>くんな、するな−>せんな。
動詞終止形+禁止の終助詞・な
+飛騨方言特有の男性宣言終助詞・((M1)い ないし (M2)よ) あるいは
+飛騨方言特有の女性宣言終助詞・(F)いな
飛騨方言らしい言い回しです。男女の言い回しの差もはっきりとしています。
例えば男性は、(M1)せるない、(M2)せるなよ、女性は、(F)せるないな、と言います。
アクセントは男女とも、最初の・な、です。
動詞終止形
+古語助動詞・ぬ、の撥音便・ん
+仮定の古語助詞・ば、と同じ飛騨方言助詞・や
+打消しの形容詞・ない、飛騨方言訛り・ねえ
+飛騨方言特有の男性宣言の命令の終助詞・ぞ
男性のみ用います。飛騨方言らしい表現になります。
例えば、サ変゛ですが、せるんやねえぞ、といいます。
動詞終止形
+古語助動詞・ぬ、の撥音便・ん
+仮定の古語助詞・ば、と同じ飛騨方言助詞・や
+打消しの形容詞・ない
+飛騨方言特有の女性宣言の命令の終助詞・えな
女性のみ用います。飛騨方言らしい表現になります。
例えば、サ変゛ですが、せるんやないえな、といいます。
筆者の感覚としましては、せるんやねええな、せるんやないいな、せるんやねえいな、
とはあまり言わないと思います。
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