大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言における動詞未然形+助動詞・た、による過去動作の尊敬表現(2)

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飛騨方言の過去の尊敬表現の一種に、未然形に"た"を足す言い回しがあります。 元となる動詞の未然形+"さった"の言い方が訛った可能性がありえます。


四段動詞 : 未然形に "た" を付加
行かた 泳がた 押さた 打たた 思わた 飛ばた 
飲また 乗らた 有らた 死なた 蹴らた 

上一段動詞 : 未然形に "た" を付加
着なた  似なた  干なた  見なた  射なた 
起きなた 過ぎなた 落ちなた 恥じなた 強いなた 
滅びなた 悔いなた 懲りなた 

下一段動詞 : 未然形に "た" を付加
得なた  受けなた 上げなた 寄せなた 交ぜなた 
捨てなた 出なた  尋ねなた 経なた  考えなた 
調べなた 止めなた 超えなた 晴れなた 植えなた 

カ変動詞 : 未然形に "た" を付加
き(来)なた 
サ変動詞・する : 未然形に "た" を付加
せなた しなた 
サ変動詞・講ずる : 未然形に "た" を付加
講じなた 

上記のすべての活用で、 "た" を "さった" に置換可能です。

ところが、すべての四段動詞で "た" を "さる" に置換できません。そうしますと明らかに不自然です。 むしろすべての四段動詞では"た" を "っさる" に置換可能で、現在形尊敬表現になります。

上記の四段動詞以外の動詞では、 "た" を "さる" に置換可能で、現在形になります。

四段動詞以外においては、上記のほとんどの動詞で、 "た" を "っさる" に置換可能で、現在形尊敬表現になります。 ただし、恥じなさる、強いなさる、滅びなさる、 悔いなさる、懲りなさる、 講じなさる、の語が  "っさる" に置換すると不自然のようです。

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