共通語の、言う、に相当するのが、飛騨俚言動詞・そう、です。
共通語の時制表現に対する飛騨方言訳ならびに相当する英語の訳を三者対応で以下に記載します。
彼は言うでしょう ありゃそうろ He will say.
彼は言っているでしょう ありゃそようるろ He will be saying.
彼は言う ありゃそう He says.
彼は言っている ありゃそようる He is saying.
彼は言い終わった ありゃそい終わった He has said.
彼は言い続けてきた ありゃそってきよった He has been saying.
彼は言った ありゃそった He said.
彼は言い続けていた ありゃそよった He was saying.
彼は言っていた ありゃそっとった He had said.
彼は言っ続けていた ありゃそよっとった He had been saying.
未来形で、ろ、を付加するのは、らむ、の意味です。そうらむ、が、そうろ、になり、そようらむ、が、そようろ、になります。
現在進行形の、そよう、というのは飛騨方言に特異な活用で、例えば、He is going といえば、ありゃいきょうる、と言えばいいのです。
He is writing かきょうる、 singing うたいようる、 crying 泣きょうる、など全ての動詞で活用します。
過去形は、そいた、ですが、必ず促音便を用います。そいた、が、そった、になるのです。
そようる+りた、で、そようりた、になりますが、これも促音便化し、そようった、になり、さらに語が詰まり、そよった、になります。
言っていた、に対応するのが、そいてお(る)+(や)りた、ですが、そいておりた>そいておった>そっておった>そっとった、と変化します。
以上を総括しますと、テンスの多様性は日本語の共通語より英語に軍配が上がりますが、
飛騨方言は英語と一対一で対応してすべて表現が分離し、時制表現が豊かで、なおかつ簡潔明瞭な言語である、といえます。
特筆すべきは、飛騨方言には英語の現在進行形、過去進行形に対応する活用がある事でしょう。