大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

(動詞連用形)+飛騨方言後項動詞・よる

戻る

鳥のまさに死なんとするやその鳴き声やかなし、 英語の現在進行形に相当する飛騨方言の言い回しに 連用形+よる、がさらに音便変化して、"〜ようる"表現が飛騨方言の 特徴です。飛騨方言訳しますと
とりゃあまさに死にょうりゃ、その鳴き声ぁかなしいさ
となります。 さてこの複合語表現はネット情報によりますと京言葉の流れを汲む言い回しでないかと 筆者なりに考えます。 京言葉さんの 2-10 複合語のアクセント から一部転用させていただきますが、 アクセント、活用、音便変化に違いがありますが、 京言葉と飛騨方言の共通項というものも伺えます。 内省にまかせるまま以下の表を作成しますと、

  語形・アクセントにおける京言葉と飛騨方言の対比 

         現代京都語      飛騨方言    
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
終止・連体    うたい‐よる     うた‐いょうる    
         ●●●‐○○     ●●‐●○○○
         かくし‐よる     かく‐しょうる
         ○●●‐○○     ○●‐○○○
過去       うたい‐よった    うた‐ようった
         ●●●‐○○○    ○●‐●●○○    
         かくし‐よった    かく‐しょった
         ○●●‐○○○    ○●‐○○
連用       うたい‐よって    うた‐よって
         ●●●‐○○○    ●●‐●○●
         かくし‐よって    かく‐しょって         
         ○●●‐○○○    ○●‐●○●   
否定 終止・連体 うたい‐よらへん   うた‐ようらん
         ●●●‐●○○○   ●●‐○○●●
         かくし‐よらへん   かく‐しょらん
         ○●●‐●○○○   ●●‐○ ●●
   過去    うたい‐よらへなんだ うたようら‐なんだ
         ●●●‐●○○○○○ ○○○○○‐●●○
         かくし‐よらへなんだ かくしょら‐なんだ
         ○●●‐●○○○○○ ○●●○○‐●●○
   連用    うたい‐よらへいで  うたよら‐なんで
         ●●●‐●○○○○  ○○○●‐●○●
         かくし‐よらへいで  かくしょら‐なんで
         ○●●‐●○○○○  ○●●○●‐●○●
以上の結果からたちどころに幾つかの結論、 つまり飛騨方言の特徴が導き出せます。

★同上の複合語表現において飛騨方言はかなり色濃く 京言葉の系統に属する。

★ただし飛騨方言では先行する連用形語尾は後続する動詞・よる、と 完全一体化し半ば助動詞化(〜ようる)する。

★飛騨方言では先行する動詞語幹と後続する(〜ようる)表現の間にアクセントの 切れ目が生ずる。

★京言葉における三語の複合語表現、すなわち連用形+未然形+へる、 の言い回しは飛騨方言には存在せず。

ページ先頭に戻る