飛騨方言における複合動詞のなかで、後項動詞・まる、というものがあります。
実は、まわる・回る、からの語の脱落です。意味は全く同じです。
例えば共通語でも、探し回る、といいます。単に探すという意味ではなく、
ぐるぐるとあちらこちらを(場合によっては同じ場所を何回も)探す、という意味ですね。
また、後項動詞・まる、はラ行四段活用であるため、
飛騨方言でも共通語と同じく連用形は必ず促音便・まって、になります。
つまり飛騨方言ではこの後項動詞は連用形に於いてハ行四段活用動詞・舞ふ、と同音異義語になってしまうのです。
どうせなら楽しく、動物園をテーマに思いつく限りの例文をお書きしましょう。
- ロッカーがないもんで、荷物をもちまる。(=持ち回る)
- ロッカーがあったもんで、荷物をもちまらなんだ。(=持ち回らなかった)
- よしゃええに最初に土産買って、ずうっともちまっとった。(=持ち回っていた)
- ペンギンが池の中を泳ぎまる。(=泳ぎ回る)
- ペンギンが池の中を泳ぎまっとる。(=泳ぎ回っている。泳ぎ舞っている、ではありません)
- 腹ペコのパンダが笹をたべまっとる。(=あちらこちらと食べ回っている。)
- 小さい子が泣きまっとるが(泣いてウロウロしているが)、ありゃ迷子でねえが。
- あの子の親も今、さがしまっとるんで(=探し回っているので)ねえが。
- 分厚いスケッチブックに熱心に動物の絵をかきまっとる(あちこちの檻へと書き歩いている)。
- 折角ぜにを払ったんやし、広い池やで、こぎまらんにゃ(漕ぎ回らなくては)だしかんぞ。
- 白熊が同じどこばっか歩きまっとる(=グルグル徘徊している)。ストレスなんやさ。
- ダチョウがはしりまる(=走り回る)。
- ダチョウがはしりまっとる(走=り回っている)。
- ダチョウがはしりまりょうる(はしりまりおる=走り回っている)。
- ダチョウがはしりまりょる(=走り回っている)。
- かけずりまって(=駆けずり回って)あいとるベンチをさがいで(=探して)きた。
やっと昼飯や。
ただし、共通語では駆け回るといいますが、飛騨方言では、かけまる、とは
どうも言いませんね。
ともあれ、飛騨方言後項動詞・まる、の第一報でした。
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