最近の癖ですが、デパートにある大型書店に寄り何か方言のネタ本が
ないか、などと思ってついふらふらと店内を巡る事があります。
民俗学、歴史、言語学、辞書コーナー等ですね。
町田健・編著、言語学のしくみ、研究社、が目に留まり、
平易な内容に思えたので立ち読みはやめて、書斎の積読用に
買い求めました。
それにしても、当たり前が当たり前でない、太郎は学生だ、の
意味はなんだろう、などという事について黙々と書かれています。
そして飛騨方言の勉強に役立つ記載がありました。降る・走る、など動作が
ある一定の時間継続して意味をなす動詞を継続動詞といい、一方、
死ぬ・着く、など一瞬で終わってしまう動作を表す動詞を
瞬間動詞、という件です。
言いだしっぺは金田一春彦先生のようですな。
共通語では確かにそのような区別があるのでしょうね。
ネット検索しましても動詞の種類と言う事があれこれ書かれて
いる事に気付かれます。
さて瞬間動詞についは、過去形と未来形しかなく、実は
現在形がそもそも存在しないというもの面白いですね。
例えば着く、ですが、着いたといえば過去に着いた、今はすでに
到着しているという事で、(もうすぐ)彼は着く、といえばつまり
まだ着いていないという意味です。例えば何が何でも現在形に
しようと思って、聖火が着こうとしています、といっても結局は
まだ着いていません、といっているだけ。聖火が今着きました、
といっても既に過去の事というわけです。
この点、瞬間動詞連用形+おる、の飛騨方言の言い回しは
まさに現在形の表現と言う事になるのではないでしょうか。
聖火がつきようります(飛騨方言)、といえば、今まさに
聖火が着く瞬間です、という意味ですものね。つまり
活用 例文 時制
未然 着かず 未来
連用 着きました 修飾する用言の時制、過去
着きます 修飾する用言の時制、未来
終止 着く 未来
連体 着く頃でしょう 続く体言に続く用言の時制、未来
着く頃だった 続く体言に続く用言の時制、過去
仮定 着けば 未来
命令 着け 未来
というようなことになるのでしょうか、ふーむ。
どんなにやりくりしても現在形になりませんね、ふふふ。
また飛騨方言の瞬間動詞連用形+おるの表現に関しては、
つきょうった まさに着こうとしていた 過去
つきょうる まさに着こうとしています 現在
つきょうるろ 着こうとしているだろうね 未来
などと時制が変化できるのでしょうか。