大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

末語二拍が、やす、の動詞

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末語二拍が、やす、の動詞というのは 一般的には自動詞を他動詞化したものでは ないでしょうか。 飛騨方言の動詞としては例えば三拍なら、 かやす、きやす、もやす、がパッと思い浮かべられますが、 他にもないでしょうか。 では国語辞典と古語辞典を引いてみましょう。
共通語   飛騨弁   古語
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あやす   あやす   ? 
いやす   いやす   いやす
こやす   こやす   こやす(肥)
たやす   たやす   たえす
たがやす  たがやす  たがへす
はやす   はやす   おふす(生)
はやす   はやす   はやす(生やす)
はやす   はやす   はやす(囃す) 
ひやす   ひやす   ひやす
ひやす   ひやかす  ひやす
ふやす   ふやす   つむ
もやす   もやす   くぶ、たく

かえす   かやす   かへす
かえす   かやす   かやす(近世上方語)
けす    きやす   けつ
もす    もやす   くぶ、たく

したたらす したたらす あやす
横になる  横になる  臥やす(こやす)
言いはやす 言いはやす そやす
そそのかす そそのかす そやす
なえさせる なえさせる なやす
ねばらせる ねばらせる ねやす
ひきたてる ひきたてる はやす(栄、映)
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主に三拍動詞で拾ってみました。 ボキャ貧にて、赤ん坊をあやす、の 古語がわからず。そう難しく考えなくても、 今も昔も、あやす、でよいのでしょうか。 せっかく作った表ですが、混沌としています。

つまりは一語毎に本当は語誌が必要なのでしょう。 例えば、耕す、の語源が、田返す、である事は、 つい先ほどまで知りませんでした。 でも佐七はこの言葉にピーンときます。 春先に、固い田んぼを相手に、備中ぐわで土起こし をする動作からきているものと直感します。 弥生時代から日本人は木ぐわでせっせと田の土起こし をしていたのですね。

さて、たかへす>たかえす>たがやす、の語変化は、どうして 生じたのでしょうか。 子音の挿入現象(連母音を嫌ってことさらに子音を挿入する事。 例 はるさめ。フランス語に多く、リエゾンと呼ぶ。) でしょうか。そんな事はないでしょうね。 自動詞を他動詞化する接尾語の意味で、〜やす、という言い方が何時の時代から 発明されて、田を耕作するという他動詞表現で 終には、たがやす、というようになったのでしょう。

飛騨方言では、 自動詞・返える・消える・燃える、から、 他動詞・かやす・消やす・もやす、がそれぞれ 発生したのではないでしょうか。 ただし、手元の国文学資料、語誌資料をみても 未だにこのような論旨の記載がないのです。 表の通り、なにぶんにも例が少なすぎて甚だ非生産的ですから、 こんな事を考えるのはひょっとして私だけかと、 筆者は大変に不思議な感じがします。 でもこれって快感。

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