別稿に飛騨方言の指示代名詞(近称・中称・遠称・不定称)・
"こり(ぃ)"、"そり(ぃ)"、"あり(ぃ)"、"どり(ぃ)"
を記載していますが、実際の用例としては、主語を示す二つの助詞、係助詞・は、及び格助詞・が、
に接続する場合が大半です。しかも助詞を小さく発音するか、あるいはラ行拗音で発音するのが
飛騨方言の特徴です。
まずは主語・は/が、ですが、こりゃ美味い、という言い方が普通です。
発音は同じで意味は、これは〜、にも、これが〜、にもなります。
会話の流れが文意を決定するという事のようです。
また強調して話す場合ですが、こりゃあ美味い、になります。
こりぃは美味しい、とは普通は言いません。
ことさらに助詞・は/が、を用いたい場合は、
共通語に同じく、これ・それ・あれ・どれ、が
用いられる事が一般的のようです。
例えば、"こりゃええ。これがえんやさ。あれはだめやさ。
(=これはいい。これがいいよ。あれはだめだ。)"等。
この文は"こりゃええ。こりゃあ、えんやさ。ありゃだめやさ。"
と言い換える事もできます。
そして他の大半の助詞に接続する場合は共通語に同じく、これ・それ・あれ・どれ、が
用いられる事が一般的のようです。
例えば、これかな、これから、これぐらい、等々。
文例ですが、"こりゃええ酒や。これぞ飛騨の酒や。これから、これぐらいのまにゃ。"
体言止めで用いられる場合もラ行拗音は用いられません。例えば、
"酒って言ゃあこれ!これが飛騨の酒や。こりゃええ。"
また飛騨方言では撥音便が可能な助詞の接続はすべからく用いられるべき
でしょう。例えば、こんだけ、こんでも、こんなんか、こんに、こんにも、
等々。
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