大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
へこなす(=皮肉る、やりこめる) |
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私:この数日だが、飛騨方言の接頭語について、幾つか原稿を書いてきた。今夜は「へ」にしよう。 君:ほほほ、あなたの意図がわかるわよ。伊呂波48文字を完成したいのでしょ。 私:まあ、そんなところだが、そんなにうまくいくかどうか。でも乗りかかった舟という訳だ。 君:他サ五(他動詞サ行五段)「こなす」が主人公のような気もするわね。「皮肉る、やりこめる」の意味であれば、これは卑罵(ひば)表現、つまりは「へ」は語気を強める接頭語であり、二拍動詞連用形促音便からの転ではないわね。 私:いかにも。 君:まずは「こなす」の注釈をお願いね。 私:うん。やはり、古語だ。他サ四「こなす熟」だが、ざっと五つほどの意味がある。語源としては「粉成す」が有力、がしかし、「こな・くな」あたりからの状態語から、との説もある。更に「こな」の語源は「こ粉」、つまりは何と「な」が接尾語。五つほどの意味のひとつが「そしる・けなす・ばかにする・軽くあしらう」。この卑罵表現って、年代はいわなくてもわかるよね。 君:ほほほ、わかるわよ。上古では「粉々にちいさくする」という意味でスタートし、年代と共に意味が増加し、後世には卑罵表現になったという事なのでしょうよ。 私:その通りだ。語誌の学問というか、国語の歴史の常識というか、もうぎゅうしょう モウギウセウ【蒙求抄】に記載があるから中世語。便利な世の中になったものだ。 君:なるほど中世語が飛騨に残り、しかも意味は同じで、しかも接頭語「へ」がついて俚言になったという事なんでしょ。 私:うん、と言いたいところだが、全国のほんの数か所の方言。つまりは俚言に近いといってもいいね。僕は俚言をかってに広義に解釈している。つまりは東京語でも畿内方言でもなければ俚言。全国広しといえども数パーセント以下の人しか話さない言葉は俚言の扱いでよいのでは、と感じている。 君:左七なりの理屈という事ね。あら、言い間違え、左七なりの「へ理屈」よ。ほほほ 私:なんだ、もうオチか。つまらない女だな。 君:あら、お言葉ね。何か、付け足したいことがあるの? 私:早い話が飛騨方言「へこなす」って共通語「けなす」の意味なんだが、早い話が「けなす」の語源は「こなす」なんだよね。つまりは「こなす」が意味が変わらず音韻変化だけして「けなす」になった、って事じゃないか。一部の語源辞典などには、やはり、その語源説の記載があった。素直に支持したい。 君:なるほど。「けなす」が趣味の左七にしては、意外にも素直ね。これが今夜のオチね。ほほほ |
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