てきない と言う形容詞は古語辞典に載っていますので、江戸時代までは標準語だったようです。
がしかし、どういうわけか今は飛騨と北陸からの発信に限られ、代表的な飛騨方言となっています。
いずれの発信も語意は古語辞典のそれと同じで、身体が苦しい、なんともはや、やるせないという意味です。
ところが、むてんに は私の古語辞典にはありませんでしたが、ネット情報によりますと、
"源氏のきみいたくゑいなやめるさまにもてなし給てまきれたちたまひぬしむてんに女一宮女三宮のおはします"、
ふーむ、意味は飛騨方言での"むやみに"と同意でしょうか。
文例ですが、"おりゃなんや(=なんだか)、むてんに(=むやみに)てきないんや(=疲れます)。二日酔いならわかるけど、はや(=すでに)四日目やでなあ。
やっぱ(=やはり)酒はちょっと、おいとかんにゃあ(=やめておかねば、おく=やめる)だしかん(=だめだ)なあ。"
さあ皆さん、今日は国民的卒業式ソング・贈る言葉を飛騨方言で歌わんかいな。悲しみ を てきなさ と訳してみたんやけどえな。
暮れなずむ町の 光と影の中
去りゆくわりぃに 贈る言葉
"てきなさ"こらえて 微笑むよりも
涙のうなるまで 泣くほうがええ
人は"てきなさ"が 多けりゃ
人には優しゅう できるんやで
あばなぁだけやと さびしすぎるで
愛するわりぃに 贈る言葉
夕暮れの風に 途切れたけどなあ
終わりまで聞いて 贈る言葉
信じられんと 嘆くよりなあ
人を信じて 傷つくほうがええ
求めんでえ 優しさなんか
臆病者(おくびょうもの)の 言いわけやでな
はじめて愛した わりぃのために
飾りもつけんで 贈る言葉
これから始まる 暮らしの中で
だれかがわりぃを 愛するさなあ
そやけど おりぃほど わりぃのことを
深こう愛した ぼうはおらんさ
遠ざかる影が 人込みに消えてまった
もう届かんさ 贈る言葉
もう届かんさ 贈る言葉
相当に頭が混乱してまっとる(=混乱していますか)? これが元の歌詞です。