この句はなんと四連発もの飛騨方言による究極の飛騨方言俳句です。標準語ゼロ俳句です。
1."かねこおり(名)"ですが、かねこり とも言い、金属のような氷、つまり、ツララの事を言います。
2."くすがる(五動)"は、突き刺さるという意味の飛騨方言で、文字通りグサッと刺さる事を示しますので、
この擬態語から変化したのでしょうか。
3."あいまち(名)"ですが、文字通り、あやまちの意味で使用される事もありますが、特に"怪我"の意味で使用される事が多いようです。
"おおあいまち"は大怪我と訳されます。
4."おそがい(形)"はおそろしい、が転じて、こわくてしようがない という意味になります。
以上から、ツララが刺さると怪我をするのがおお、こわい という意味の俳句になります。
春も近いと大屋根の雪は溶け出し、夜にツララを成長させます。
南向き屋根のツララは日中に融け、痩せ、ポタリと落ちます。
ところが、北向きの大屋根では日中に融けるどころか日増しに成長、大根ほどの大きさになります。
そしてある日突然、この巨大な凶器が自重に耐えかねてドスンと落下するのです。
直撃されると大怪我をしますが、小学校の校舎北側の大屋根には毎年この時期に、
所狭しと巨大なツララが連なり、少年・大西佐七を畏怖させていたものでした。
授業中にドスンという金きり声ならぬ"かねこり"声・断末魔の音が聞こえるのです。
春近し、立ち入り禁止区域解除の音ともいえます。
|