大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
棒縛(狂言) |
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私:表題の通りだが、今日の話題は室町時代の中央の言葉について。 君:ざっと100ほどある狂言の中でも知られたほうよね。 私:そう。今日も家内に連れられて名古屋御園座へ。棒縛は今までも何度か観たが、歌舞伎の演目の合間に棒縛が演じられた。蛇足ながら歌舞伎は江戸言葉の勉強にはなるが。 君:前置きはいいから、結論をお願いね。 私:うん。大名、太郎冠者、次郎冠者の三人だが、大名がサ行イ音便を使ったので、おおっ、と思って。 君:サ行イ音便とは、サ行動詞連用形のイ音便。飛騨方言に特有ね。財布をなくした、というべきところを、なくいだ、という言い方。ほほほ、だから飛騨方言のサ行イ音便は室町時代の中央の言葉、つまりは京言葉の化石でないかと推論したのね。 私:その通り。今まで幾つかの狂言を鑑賞してきてサ行イ音便に気づかなかった事が不思議で仕方ない。従って僕のテーマとしては今後もあらゆる狂言を鑑賞しサ行イ音便を探す事。 君:そんな事しなくてもどなた様かがとっくに書いていらっしゃるわよ。 私:そうだね。例えば依田恵美先生の中央語におけるサ行イ音便の衰退時期をめぐって。読んだ事は無いが。概要を引用させていただこう。依田(2001)の発表内容をまとめ、中世に著された抄物や、近松門左衛門による浄瑠璃、近世期の噺本等におけるサ行四段動詞の音便の使用状況を分析し、当時の大坂や京都でいつ、どのように衰退していったのかを述べた。また、その結果を基に、サ行四段動詞イ音便の衰退時期について先行研究の間で見方に約100年の差がある理由として、近松作品に見られる、作劇上の効果を意図した言葉の選択が影響していることを指摘した。 君:ほら、既に立派なご業績が。室町期の中央では当たり前の話し方であったもののも近世期に衰退、それは近松作品が一枚、かんでいるのよ。 私:なあんだ近松が犯人だったのか。おのれあやつめ、成敗いたいでくれやうぞ。 君:おっと、成敗いたす、のサ行イ音便ね。ほほほ |
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