大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

飛騨の若者言葉「やお」

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私:先程だが、大変に有用な飛騨方言ユーチューブサイトを発見した。ここ
君:なるほど。
私:注目すべきは飛騨方言講座ぁぁ
君:お忙しい読者の方々の為に一言で説明、お願いね。
私:うん。指定の助動詞、というか文末詞だが、東西対立があって、東は「だ」、西は「じゃ(や)」。そして飛騨方言の歴史を紐解けば飛騨工が奈良・京都の畿内方言を故郷飛騨に持ち込んだので飛騨方言は西側「じゃ(や)」。ただしこれは戦後辺りまでの伝統的飛騨方言。平成・令和の飛騨の若者は「や」を更に発展させて「お」を多用し始めた、というお話。
君:戦前の飛騨人なら「じゃよ」、これが戦後は「やよ」、そして平成・令和の飛騨の若者は「やお」という訳ね。
私:正にその通り。私も昭和28年生まれで既に齢68、もう若くないが、流石に「やお」を使う事は有り得ない。
君:あら、どうしてお知りになったのかしら。
私:ユーチューブだね。有難い時代になったものだ。方言サイトを開設したのが2005あたりだったか、動画サイトは存在しなかった。現役の飛騨の若者がこうやって情報発信してくださるので、方言学的というか言語学的にこの現象がピンと来る。
君:要は子音の脱落ね。
私:その通り。然もヤ行の頭子音はいずれも母音の「い」(硬口蓋接近音[j](IPA))の音を短くした半母音である事がミソ。口角を大きく開く「い」の母音は、大きく開かない母音「あ・お」とは相いれない。
君:つまりは「そうやよ」を母音だけで話すと「お・う・い・あ・お」になるのだけれど「う・い・あ」の部分がとても言いにくい場所なので、「い」を省略して「お・う・あ・お」にして話しやすくしたという意味ね。
私:その通り。「そうじゃよ」の場合は半母音ではなく拗音の部分が言いにくいので「そうじゃお」で良いのかもしれないが、飛騨では戦前から戦後に「そうじゃ」から「そうや」への音韻変化が生じているので、「そうじゃお」は生まれなかったという事。
君:全て言語学の基本原理で説明が付くのね。
私:その通り。要は、方言が生ずる根本的なエンジンは、人は話しやすい方向に音韻を変化させていくという事。しかも日本語の場合、母音は五個しか無いし、母音の三角形という公式がある。
君:母音の三角形について簡単に説明してね。
私:うん。要は言い易い母音の並びというのは「あ・え・う」ないし「う・え・あ」、あるいは「あ・お・う」ないし「う・お・あ」、つまりはこの四パターンに集約されるというもの。これが母音の三角形。
君:逆に言いにくいのはどんなパターンかしら。
私:「い・う」「う・い」「い・あ」「う・あ」辺りだね。
君:なるほど、「そうやよ」の母音の並びは「う・い」+「い・あ」で、これが「う・あ」になったから、少しはしゃべりやすくなったという事ね。
私:その通り。ただし、これくらいの事で驚くな。「そうやお」は将来、更に変化する可能性がある。わかるよね。
君:そりゃあわかるわよ。「そやお」あるいは「そうあお」、「そあお」辺りに進化するのでしょうね。
私:その通り。誰も飛騨の若者の暴走を止める事は出来ないし、止める必要もない。言葉は常に進化している。超未来の飛騨方言は「そあ」に変化するのだろう。
君:「えっ、そう?なる!そあ!」これがおそらくは未来の飛騨の若者言葉なのよね。ほほほ

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