大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 古代

助詞の歴史

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私:総論中の総論という事で助詞についてサラリとお浚いしましょう。
君:古語辞典一冊あればオッケーね。巻末に表があるから。
私:そもそも助詞の種類だけど、格助詞(体言副詞間の関係)、副助詞(句に接続する用言の意義を修飾)、係助詞(後の述語内容を限定)、終助詞(終止形に接続、文をまとめる)、間投助詞(句の切れ目に挿入し感情表現)、接続助詞(句間の結び目について両句の叙述に対する表現者の認定)、並立助詞(体言・副詞を並立)、ざっとまあこんなところで日本語には結局、七種類の助詞が存在する。
君:ほほほ、大人でも混乱するような事を書いて。お孫さんに一生懸命、格助詞をお教えになっている事は想像できるけど、言葉は楽しませて教えなきゃ。
私:いや、教える事はしていない。孫がどうやって自然に日本語を身に着けていくのか、自然観察しているだけなんだよ。
君:なら、いいけど。
私:早速だが、全体の傾向としては古語では助詞がワンサカあったが、現代日本語では減っているという事だね。
君:時代ごとに見なきゃ駄目よ。生まれる言葉、廃れる言葉、そして最も大切なのが生き残る言葉。
私:そうだね。助詞の内訳で見ると、古語には終助詞がとても多い。他の6種類の助詞より群を抜いて多い感じだ。
君:数字で示したほうがいいわよ。
私:そうだね。手元の三省堂古語の巻末重要助詞一覧を数えてみよう。間投助詞7、終助詞75、係助詞19、副助詞22、格助詞18、接続助詞42、並立助詞7、以上だ。
君:終助詞がダントツ一位なのには大切な理由があるのよ。
私:ははは、それくらいは言われなくてもわかるよ。時代による変遷だね。古語辞典は上代・中世・近世と、幅広く日本語の歴史を紹介しているから、生まれる言葉、廃れる言葉、という観点からは、それぞれの時代の終助詞があったという事、終助詞の使われ方で時代がわかるという事。古語で作文をしようという輩は奈良時代の終助詞と江戸時代の終助詞をチャンポンにして書くかも知れない。
君:それはあなたよ。
私:お言葉だな。終助詞も時代を加味した分類が必要だな、と気づいてしまったよ。
君:ほほほ、では奈良から江戸まで続く終助詞を書き出してみて。そのような終助詞は安心して作文していい、という意味よ。
私:ほいきた。「か」「かや」「ぞ」「な(感動)」「な(禁止)」「は」「ものか」「ものを」「や」「よ」、以上10個だ。
君:ほほほ、その十個の終助詞はお孫さんがいち早くマスターなさるといいわね。
私:だろうな。でもね、まだまるでセンテンスになっていないんだよ。名詞の語彙は凄いんだが、動物の名前は全部言える、トーマスの機関車の種類も。いまは格助詞に挑戦中の孫だ。
君:乳児はまずは格助詞と終助詞ね。
私:ほんと、そう思う。間投助詞、係助詞、副助詞、接続助詞、並立助詞、これってニュアンスの問題だからね。
君:ゆっくり、自然に覚えて行けばいいのよ。
私:終助詞の事をもう少し話してもいいかな。
君:どうぞ、どうぞ。
私:10傑以外の終助詞、つまりは残り65個の終助詞だが、奈良時代だけのもの、奈良・平安だけのもの、平安から室町のもの、室町・江戸のもの、江戸時代だけのもの、以上のように分類できそうだね。つまりは上代の終助詞・中世の終助詞・近世の終助詞と三分類が可能で、となると各時代の終助詞の数は半減どころか、それ以下になる。つまりは終助詞の時代毎の流行り・廃れ、これが日本語の歴史じゃないだろうか。
君:何を当り前の事いっているのよ。
私:すみません。当り前の事を。じゃあ、話かわって間投助詞7、これらは上代語ばかりでひとつだけ「や」が奈良・江戸、ただしこれも口語で消滅、つまりは古語の間投助詞は口語の間投助詞に該当無し。現代語では「さ」「ね」「よ」、日本人の言い方も明治以降でも随分と変わってしまったんだね。
君:それも当り前の事じゃない。子供たち、毎日、SNSで造語遊びしているわよ。
私:つまりは孫に教える必要も無し。
君:今も昔も言葉の廃れはあるけれど、絶対に変わっていない事があるわね。
私:そう。それは先行接続句ならびに後行接続句の活用形だ。活用形の規則だけは時代が変わっても変わらない。
君:活用を間違えたら日本語じゃなくなっちゃうわね。
私:そうだね。それに四段・上一二・下一二の活用とその他の動詞つまり変格活用の動詞では接続活用形が異なる事もある。
君:でも変格活用は数が少ないからあまり間違いはしないと思うわ。
私:一番、いい方法がある。その都度、辞書で確かめる事。
君:そんな事しなくても口語から文語が類推できるでしょ。貴方が好きなパウルの公式を使うのよ。
私:勿論、やってるよ。
君:なら、どうして辞書を引くの?
私:自信が無いんだ。英語は楽だね。文法をチェックしてくれる無料ソフトが沢山ある。
君:文語文法をチェックするソフトなんて無いわよ。
私:今、ネット検索してみたが、ヒットするのは教師用指南本、受験本、つまりは書籍ばかり、やはりこの世の中に文語チェックソフトはないようだね。
君:第一に、需要が無いわね。
私:えうなし/と/おもふ/こころ/の/あだざくら/あがきみ/したひ/て/かかむ/とぞ/おもふ/嗚呼。
君:あな/むがし/の/わざ/文語チェックソフト/かし/いと/をかしう/こそ/おぼえ。

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