飛騨村佐七氏は中学卒業後、大都会に就職され裸一貫で会社を設立、
若くして社長となり、会社は着実に発展し、彼は今では男女数十人を雇う人間です。
彼の常に人の言葉を聞き逃さず、真摯に受け止める態度は、
お得意様からも、お取引先からも厚い信頼を得ており、
社内の人間は皆、"社長、社長"、と彼を慕います。
彼が仲人となった彼の社での社内結婚も多く、誰よりも親身に身の上相談にのってくれる、
ホント良い社長さんなんですよ。
もう一点、彼のご意向で、会社では全てワリカン主義、全て男女平等、が
徹底されているという職場のルールがあります。つまりはお茶汲みも各人で、
社長とて例外ではありません。
さて事件当日、事の始まりですが。ある祝日の晩の飛騨村佐七氏が、
その都会一のあるホテルでおひとり用事を済ませ帰ろうとする間際のロビーにて。
あれまあ向うにお見えし職場の東京花子さんです。
ところが、見知らぬ男性に何かを言われ、
うつむき、しおだれ、別れようとするただならぬ雰囲気の男女です。
結局ひとりになる彼女を遠くから気にしつつ見ていた飛騨村社長ですが、
あれ花子ちゃん。あんたもここに用事があったんかな。
今おった男の人、ああ、あんたの彼氏やろ。
こんな事聞くのもなんやけど、、、、別れ話でもあったんかな。
という社長さんの優しいお言葉に思わず泣き出す花子さん。
社長さんは、(いっ、いかん、やっぱ別れ話やったんやさ。
こりゃちょっと身の上話きいてやらんとだしかんさなあ。)、
と瞬時に察して、
なんやなあんた、今日に限って、そんな変な顔して。あんたらしゅうないよ。
私に出来る事がありゃ力になってやるで。
といい、彼女をささっとそのホテルのバーに連れ込んだのです。
小一時間もあれこれと身の上話を聞かされてしまった社長さんですが、
そこはそれ人生の甘いも辛いも知り尽くした方、彼女に
あれこれアドバイスすると、あらあらさっき泣いたカラスがもう笑った。
よかったですね花子さん、社長さんに元気を与えられて。
意気揚々とバーを出ようとする社長さんと花子さんですが、社長さんの
(にっこり笑って)今夜はわたしがだいてやるよ。
という言葉に一瞬身じろぎ、目を吊り上げ、口をキッと結び、
持っていたハンドバッグで思いっきり社長の顔をひっぱたく花子は
後ろを振り向きもせず、さっと帰るのでした。不意を食らった当の社長さんですが、
アマゾネス花子の必殺技にお顔はひとたまりもなく、眼鏡は飛んで割れ、
かつらも飛び、鼻血に顔は朱(あけ)に染まり、救急車で病院に運ばれたのでした。
いったい何が間違ってしまったのでしょう。
社長さんは、
(さすがに今日のお会計がワリカンはみみっちいかな)
今夜ばかりはあなたの事を思ってお会計は私が出しておきます、と
イ音便の飛騨方言で話したつもりだったのですが、
花子さんは、"今夜はわたしが(あなたを)抱いてやるよ(同意されますね)" と聞き間違え、怒り心頭、則実力行使に出たのです。
世の中の女性の方々へ、くれぐれもお考えになって後に行動してくださいね・ショートテンパーは止めましょう、の事件でした。
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