大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
母音 |
戻る |
私:方言学全般となると、これはもう話題は無数にある。今夜は日本語の母音の数にスポットを当ててみよう。 君:母音の数と言えば「あいうえお」五個で決まり、という話題ではないのよね。 私:その通り。微妙な母音の違いという事を考えると、日本語の母音の数は5ではない、という事をまずは認識しなくてはいけない。 君:いいから、全国ランキングをお披露目してね。 私:はい、早速。ぶっちぎり一位の方言がある。しかも一県の方言。 君:想像もつかないわ。 私:実は、名古屋方言。母音数、なんと八個。なんでこうなるかと言うと、「とても美味しいです」という意味で「エビフリャーぁどえりゃーうみゃーぎゃー。」という文章に現れている。他の県では使わない母音にあふれている。共通語では五個の母音なので、「エビフライは、どえらい、うまいがね。」と言えば名古屋方言の迫力は著しく損なわれてしまうね。 君:なるほど、続いてはどこ? 私:第二位は、新潟県です。七個。これも実体験に照らし合わせて納得できるね。村上市を訪れた事がある。笹川流れを目指していたのだが、地域の老人に道を尋ねたところ、もごもご・もごもご、何とおっしゃったのか理解不可能だった。 君:ほほほ、愛知と新潟は母音が多いのね。第三位はどこかしら。 私:はい、第三位は東北地方です。青森、秋田。岩手、山形、宮城と福島の一部にて、母音数は当然ながら六。その他、兵庫の一部、岡山の一部が含まれる。 君:なるほど、続いては四位だけれど母音数は五で、全国の大多数の地域が含まれるのよね。 私:その通り。名古屋を除く大都市圏が全て含まれる。東京、京都、大坂、神戸、広島、博多、他すべて母音数が5。 君:なるほど。飛騨は母音数が5なのよね。 私:その通り。飛騨は東西の真ん中、南北の真ん中、中部地方の真ん中、つまりは日本語の最大公約数が飛騨方言と言えなくもない。 君:ほほほ、続いては母音数が4、つまりは5位の地方があるのかしら。 私:ある。伊豆大島、八丈方言だ。 君:なるほどね。母音が3などという方言があるのかしら。 私:あるとも。つまりは全国で最下位、第六位は沖縄だ。 君:南西諸島全般に母音が3なのかしら。 私:いや違う。南西諸島は島ごとに違う方言であると考えたほうがいい。那覇は3なのに、奄美大島は7、そして石垣島は6だ。 君:沖縄方言の母音が3と言うのは有名なお話よね。 私:そう。共通語「あいうえお」が那覇では「あいういう」、つまりは「え」が「い」、「お」が「う」。雲は「くむ」、蕎麦は「すば」、根は「にい」。 君:そう言えば沖縄音階も少ない音階だわよね。 私:そう。沖縄音階は「ドミファソシド」、つまりは「レ」と「ラ」が無いんだ。 君:古代の日本語は母音が多かったのよね。ペンタトニック沖縄音階も古代は七音階だったのかしらね。 私:スコットランド民謡もペンタトニックだよ。ところで古代の音韻は「上代特殊仮名遣い」だね。橋本進吉博士による大発見。 君:今後、日本語の母音の数はどうなるのかしら。 私:第一位8(名古屋方言)と最下位3(沖縄方言)は5に向かう。究極的には日本は5で統一されると思う。 君:というか、ほぼ統一されてしまっているわね。 私:うん。そして英語の影響もあり母音の数は増加に転ずるだろう。日本語は印欧語に比し母音数は少ないから。 君:ウムラウトを皆が話すようになるのかしらね。「ギョエテとは俺のことかとゲーテいい」。ほほほ |
ページ先頭に戻る |