大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 方言学

ヴァーチャル方言

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私:表題だが、どんな意味だと思う?
君:それはつまり、国語学の下位分類・方言学の中で定義される学術語。
私:おいこら、茶化してくれたね。確かにその通りなんだが、最近はコンピュータ用語でヴァーチャル空間というのがある。現実には存在しないがあたかも存在するかのように巧妙に視覚化された、つまりは仮想の空間、という意味だね。「仮想空間」との記述もあるので、こちらのほうが寧ろ国語学的に折り目正しい。どうして国語学者の先生方は「仮想方言」とお呼びにならないのだろう?
君:ヴァーチャル方言とは、つまりは仮想的方言、あるいは仮想方言という意味ね。
私:その通り。ヴァーチャル方言に対する概念は「リアル方言」という。学術語とは言い難いね。実際に生活の場において話される方言がリアル方言。つまりはマスコミの取材に応じて現地の人が自然体でポロリとお話をなさるのがリアル方言だ。
君:つまりはヴァーチャル方言とは、演劇、アニメ、映画等、要は芸術的作品の中で語られる方言。つまりは限りなく実際の方言に近いものの、うーん・ちょっと違う、と感じざるを得ない方言、という意味ね。
私:その通り。ただし、厳密な意味では、「限りなく実際の方言に近い」言い方でなくても構わないだろう。どう考えても現実には存在しないような言い方、方言文法的にも明らかに間違っている方言の表現でも構わない。
君:具体的なお話はどうかしら。
私:京アニ「君の名は」だな。
君:初めてご覧になったかたは「うん、確かに方言だが、いったいどこの方言だろう」という疑問を持つわね。
私:うん。ネットのカキコにあったね。答えは飛騨方言。確かにアニメの方言なので単純に考えると「君の名は」の方言は「ヴァーチャル方言」なのかな、つまりは「なんちゃって飛騨方言」かな、と思いたくなる人が多いだろうが実は違う。
君:どういう事?
私:飛騨方言がテーマのアニメといっても良いので、慎重に鑑賞してみたが、全ての声優さんが完璧な飛騨方言だった。つまりはリアル方言そのものといってもいいだろう。但し、言葉の定義からするとアニメだから、そもそもがリアル方言ではない、という事なのかな。この点に関しては、方言学の書籍の記載はあまりにも少なく、まだまだこれから、という感じだ。関連する言葉と言えば、ニセ方言、方言のアクセサリー化、方言のおもちゃ化、等々、熟語が飛び交っていて本当に困る。
君:学者さん達も必死なのよ。次々と言葉を作っては世に問わねば、という事だわね。
私:それと外来語の連発。やめて欲しいな。ヴァーチャルと virtual、つまりは日英で意味の違いがないのがせめてもの救いだ。共に、「仮想の」という意味だが、実際はそれ以上の意味がある。
君:うーん、そうだったかしら。
私:一見して偽物である場合はヴァーチャル(virtual)とは言わないんだよ。「確かに偽物なので本物ではない、ただし、なんとまあよく出来ている事、これでは本物と見分けがつかないどころか機能的にも問題無いし、いやそれどころか或る意味、本物をこえている、こっちのほうが本物より余程いいや、本物より洗練されているね」というのがヴァーチャル(virtual)の意味だ。virtue の訳は美徳。Modesty is a kind of virtue. 僕は生涯、学び続けるだけ。出版はしない。
君:「君の名は」の方言は文字通り「ヴァーチャル飛騨方言」なのね。
私:まあそんなところ。方言監修にあたられた下呂市出身の声優かとう有花女史のご尽力の賜物だね。
君:飛騨方言は東京式アクセントなので声優は狙える職業だわね。
私:そういう事。眠くなってきたので今夜はこの辺で。もう一点だけ、表記の問題だがネット検索ではバーチャルが最頻出だった。ヴァーチャル、ヴァーチュアル、バーチュアルなどの表記もあり、乱れている。どうにかして欲しい。
君:ほほほ、日本語学では他にはヴォイス(態)という学術語があるわね。一般語としてはボイスレコーダ等々、ボイスが多いわよ。ほほほ

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